研究課題/領域番号 |
26410226
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
片野 肇 福井県立大学, 生物資源学部, 教授 (50264685)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | カチオン性ポリマー / オリゴマー / ポリリジン / キトサンオリゴ糖 / ストレプトスリシン / アミノグリコシド系抗生物質 |
研究実績の概要 |
前年(2014年)度、単鎖長εポリリジンの探索および物性研究法の構築について所定の結果を得た。当該年度(2015年)はεポリリジンのポリカチオン型とジピクリルアミンアニオンとの沈殿生成、再溶解に基づく比色分析法を示した、同法は培養液にも適用でき、ポリアミン精製酵素のスクリーニングが可能となるが、検出に続いて生成物の単離も簡便に行える。これより、従来より長鎖長のεポリリジンや類縁化合物を精製酵素の探索が容易となる。これらの結果をAnal. Sci.誌に報告した。 ポリカチオン型εポリリジンについて、対アニオンにある種の陰イオン性界面活性剤を選ぶことで、水に難溶かついくつかの極性溶媒に易溶となるなど物性を変えられる、それでも抗菌性能などは維持されるなどの知見を得て、詳細な検討を行っている。当該年度はその一環として、また、比較のためにも、陽イオン界面活性剤について同様の対アニオン交換を行い、その物性および抗菌性能について調べた。その結果をSens. Mater.誌に報告した。 前年度、比較的長鎖長のキトサンオリゴ糖の単離精製法を構築し、その結果を学術誌に報告するとともに、同精製物を植物生理学的研究に供した。その結果、エリシター活性はむしろキチンオリゴ糖で顕著に見られるとの報告を受け、当該本年度は酸加水分解物のグルコサミンの比色定量に基づくキチンオリゴ糖の分析法を構築した。同法は蟹殻のような生物資源中のキチンオリゴ糖の含有量の決定に有用であり、それらの結果をAnal. Sci.誌に報告した。 前年度、εポリリジンの液液界面物性研究法を示した。同研究法をストレプトスリシンにも適用し、興味深い事に、リジンオリゴマーサイズにつれて疎水性となるとの興味深い知見を得て、J. Electroanal. Chem.誌に報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポリカチオン型εポリリジンは、対アニオンにある種の陰イオン界面活性剤を選ぶことで、水に難溶であるが多くの極性有機溶媒に溶けるようになる。本年度はこれが熱可塑性であるとの知見を得て、プラスチック材料としての評価を行った。同研究はほぼ完遂し、結果を現在投稿準備中である。 アミノグリコシド系抗生物質もまた2~6価のポリカチオン種として存在し得るが、アマランスアニオンはゲンタマイシン、ネオマイシンなど5価以上の電荷を持ち得るアミノグリコシドに選択的な分析試薬となり得るとの知見を得た。同分析法は培養液にも適用でき、新規アミノグリコシドの探索法として期待される。同研究はほぼ完遂し、結果を現在投稿準備中である。 また、本研究において構築したポリアミン分析法により新規なカチオン性オリゴマーが見出されつつある。以上より、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前述のジピクリルアミンを用いるポリアミン類の検出・単離法は、溶液条件によってはストレプトスリシンにも適用が可能との知見を得つつあり、同研究を引き続き行う。また、εポリリジンなどの酵素反応速度増大効果を報告してきたが、ポリアニオン種との複合体生成により、これが消失することに基づく、コロイド滴定の終点検出法についても検討する。また、キトサンオリゴ糖は数価の電荷を持つにもかかわらず、アミドグリコシドやストレプトスリシンの分析に用いることのできるアニオン性沈殿試薬が適用できない。ゆえに、キトサンオリゴ糖の比色分析に向くアニオン性色素を探索する。
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