結晶性のpolyamide (PA) とpoly(ε-caprolactone) (PCL)からなるブロックコポリマーにおいて、PAの結晶化とPCLのエッチングにより得られる多孔質構造へPAの種類や構造の作製条件が与える影響を調べた。芳香族PA (PA12T) からなるコポリマーでは、脂肪族PA (PA6) と比較してPCLがエッチングされにくくなった。これはPA12Tの高いガラス転移温度と低い溶媒親和性からエッチング反応中においてもラメラが機械的に安定であり、ラメラ間に閉じ込められたPCLの分解反応が抑制されたためと考えられる。どちらのPAからなるコポリマーでもエッチング後はPAの球晶に由来する粗い表面構造が観察された。小角X線散乱により求めたラメラの長周期は約10 nmであり、PCL組成や結晶化温度が高いほど長周期は長くなった。PCLの分解によりPA6コポリマーの長周期は縮小したが、PA12Tコポリマーでは長周期が確認されず、PA12Tではより乱れたラメラ構造を持つと考えられる。 Syndiotactic polystyrene (sPS) からなるプロトン交換膜において、sPSの冷結晶化や非晶であるatactic polystyrene (aPS) の混合と、プロトンやメタノール透過性との関係を調べた。sPSを融解後に0℃でクエンチ後、冷結晶化させた膜では、等温結晶化させた膜と比べてプロトン伝導性は高くなったが、メタノール透過の抑制も困難となった。一方でsPSにaPSを10%混合してから等温結晶化させた膜では、sPS単独よりも高いプロトンの選択的透過性が実現された。aPSを僅かに配合することで結晶の相間に閉じ込められた非晶域が広がり、これがプロトンチャネルとして機能したためと考えられる。
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