研究課題/領域番号 |
26410231
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
阿部 英喜 独立行政法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, チームリーダー (70271541)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 結晶構造解析 / 周期性共重合体 / 高分子量化合成技術 |
研究実績の概要 |
本年度は、耐熱性の向上が確認されている(R)-3-ヒドロキシブタン酸と(R)-乳酸からなる交互共重合体の結晶構造解析を進めた。交互共重合体の単結晶を調製し、その電子線回折ならびにX線回折測定を行った。得られた回折データより、R体同士の3-ヒドロキシブタン酸と乳酸からなる交互共重合体の結晶は、単位格子中に4本の分子鎖が充填され、繊維軸に対して、(R)-3-ヒドロキシブタン酸-(R)-乳酸二量体ユニットが3ユニットで一回らせんを描く構造を取ることを明らかにした。結晶中の分子密度計算より、交互共重合体の結晶は、脂肪族ポリエステルの中でも、単位格子内に極めて密に分子が充填されており、その結果、結晶融解が高温領域に現れるものと結論づけることに成功した。これと並行して、(R)-3-ヒドロキシブタン酸2ユニットごとに(R)-乳酸1ユニットが、或いは、(R)-3-ヒドロキシブタン酸2ユニットごとに(R)-乳酸2ユニットが連結するような周期性連鎖構造を有する共重合体の合成に取り組んだ。また、(R)-3-ヒドロキシブタン酸とグリコール酸から成る、交互共重合体の合成も行った。いずれの共重合体においても分子量1万程度の重合物を目的の連鎖構造を保持して調製することに成功している。さらに、より高分子量生成物を得るため、合成法の最適化条件の検討を行った。重合温度、重合時間、反応溶媒などを変化させて共重合体合成を行った。(R)-3-ヒドロキシブタン酸と(R)-乳酸からなる交互共重合体においては、未だ、分子量の著しい増大は達成できていないものの、(R)-3-ヒドロキシブタン酸と(S)-乳酸の組合せで調製した交互共重合体においては分子量7万程度の生成物を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の計画通り、交互共重合体の結晶構造解析に成功し、分子構造と結晶構造および熱的性質との相関を明らかにすることができた。また、交互共重合体に加えて、周期性連鎖構造を有する共重合体の合成も達成しており、研究目標は概ね順調に進展していると判断している。耐熱性向上の認められる交互共重合体の高分子量化技術は今後更なる技術開発が必要であるが、立体異性体モノマーの組合せにおいては高分子量化を達成することに成功しており、この知見を元に次年度以降に飛躍的な改善が図れるものと確信している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度において調製した各種周期性連鎖構造を有する新規共重合体の基礎物性評価と構造解析を行い、モノマーのキラリティーに加えてモノマーの連鎖構造と結晶分子鎖におけるコンフォメーション、分子鎖パッキング構造との相関を解明し、耐熱性に寄与する分子構造因子を特定する。これと並行して、連鎖構造制御した共重合体合成の効率化・簡便化技術の開発を引き続き進める。特に、分子鎖末端選択制御によって連鎖構造を制御できる開始剤の開発とそれを用いた合成条件の最適化を図る。これまでの重縮合反応から開環重合反応へ合成方法を変えることにより、重合の効率化と高分子量化を同時に達成できるものと考えている。そのために、ヘテロモノマー分子からなる環状二(多)量体をの調製とそれを利用した開環重合によるワンポット重合法の開発を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画において結晶構造解析のために大型放射光施設の利用を計画しその旅費を計上していたが、保有のX線回折装置ならびに電子線回折装置によって、結晶構造の特定が十分可能な極めて良好な回折データが得られたため、当初の放射光利用予定が必要とならなかった。結果として、旅費計上額において差額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度の研究成果に基づき国際会議等における招待講演の依頼が既に複数よせられており、成果発表の旅費として次年度において使用することを計画している。
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