本年度は、3-ヒドロキシブタン酸ならびにリンゴ酸を原料として、3-ヒドロキシブタン酸とリンゴ酸からなる交互共重合体の合成とその特性解析を進めた。(R)体の3-ヒドロキシブタン酸と(S)体のリンゴ酸との組み合わせで調製した交互共重合体は、結晶性を示すものの、その融点は130℃程度に認められ、3-ヒドロキシブタン酸と乳酸からなる交互共重合体の結晶融点よりも著しく低いものであることがわかった。昨年度までに合成し、性能評価を進めてきた3-ヒドロキシブタン酸を含む共重合体の熱物性と結晶構造解析の結果を踏まえると、高耐熱性を示す共重合ポリエステルにおいては、3分子で1回らせんを形成するコンフォメーションを取って結晶化する分子が有効であることが示唆された。コンフォメーション形成においては、キラル分子の組合せと構成モノマーの主鎖炭素数が大きく影響しているものと考えられる。 一方、昨年度までに構築してきた加水分解酵素の逆反応を利用したオリゴマー合成法によって調製した3-ヒドロキシブタン酸と乳酸とのオリゴマーを利用して、規則性連鎖構造の共重合体合成を進めた。酵素を用いたオリゴマーはカルボン酸末端に乳酸ユニットを持つオリゴマーであり、このオリゴマーから単分散オリゴマーをぶんり・回収して、重縮合反応に用いた。多段階で化学合成したオリゴマーと同様に、縮合剤を用いることにより、目的とする連鎖構造の共重合ポリエステルを調製することに成功した。
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