研究課題/領域番号 |
26410232
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
金山 直樹 独立行政法人理化学研究所, 前田バイオ工学研究室, 研究員 (80377811)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 核酸 / 界面 / 水和 |
研究実績の概要 |
申請者は最近、DNAブラシ間に働く界面間力が、表層のごく僅かな塩基対構造の差によって、斥力的⇔引力的に変化することを示唆する興味深いコロイド界面現象を報告した(例えば、Chem. Eur. J., 19 (2013) 10794.)。この界面現象が、DNAの脱水和が進行すると考えられる比較的高塩濃度の水溶液で顕著化した点に鑑み、申請者は、「DNAブラシ表層の塩基対構造に対応した異なる水和構造が存在し、これが特異な界面間力発現の主たる要因となっているのではないか」と考え、その検証を目的とする本研究を計画した。
初年度は、DNAブラシの僅かな表層構造の差が水和状態に与える影響を評価するためのプラットフォームとして、均一な表層構造を有するDNAブラシの構築法を確立した。具体的には、ステムループ型の自己構造を形成する配列のオリゴDNA鎖(SL-DNA)を採用し、ループ部位に固体材料表面へのアンカーとなる官能基を導入することによって、従来法では困難であった構造の均一性を確保した。例えば、チオール基をループ部位に導入したSL-DNAでは、完全二重鎖構造のステム部位を表層に提示した均一な構造のDNAブラシを金表面に形成した。また、このSL-DNAブラシは、1本のSL-DNA鎖あたり約8 nm2の分子専有面積を有する比較的密なブラシ構造であることが蛍光定量法より明らかになった。金基板表面に形成させたSL-DNAブラシに関して、NaClを含む緩衝液中における気泡接触角測定を行った。その結果、未修飾金基板に対する気泡接触角は、緩衝液中のNaCl濃度に関係なく一定の値を示すのに対し、SL-DNAブラシを形成させた金基板表面では、緩衝液のNaCl濃度の上昇に伴い僅かに疎水性に変化した。これは、緩衝液中のNaCl濃度上昇に伴うSL-DNAブラシの脱水和を反映しているものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を推進するための基盤技術となる、構造が均一なDNAブラシ界面の構築法(SL型DNAブラシ)を計画どおりに確立できており、その基本的な界面特性の評価の検討まで研究を進められているため。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に確立したステムループ型DNAブラシの構築法をベースとし、様々な表層構造のDNAブラシ界面に関して、その界面特性の評価を試みる。一方で、DNAブラシ表層の局所的な水和構造を評価するための方法論に関しても並行して検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を遂行する過程において、計画立案時に購入予定であった設備備品が、必ずしも有効ではない可能性を示唆する結果が得られた。研究費を効率的に使用する観点から、一旦、当該物品の購入を見合わせ、現在、導入の有効性を再度精査しているため未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画時に購入予定であった物品の有効性が確認され次第、購入手続きを開始する。
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