最終年度は、表面特性の異なるガラス基板上へのDNA修飾金ナノ粒子の吸着挙動を暗視野顕微鏡(DFM)法により評価した。本検討で使用したガラス基板は、未修飾(Bare)およびアミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)処理したものであり、それぞれの接触角およびゼータ電位の値は、Bareガラス基板(16.8°、-56.6 mV),APTESガラス基板(48.9°、+60.4 mV)と、濡れ性と表面電荷が異なる。これらのガラス基板でスペーサー材を挟み、液体サンプル観察用セルを作製した。DNA修飾金ナノ粒子の分散液をセルに封入し、一定時間静置した後に、ガラス基板上にDNA修飾金ナノ粒子が吸着していればDFM観察画像に吸着粒子が散乱した光に起因する輝点が現れる。 500 mM NaClを含む一本鎖DNA修飾金ナノ粒子の分散液をセルに封入し、10分後にDFM観察を行った。BareおよびAPTESガラス基板の何れの場合でも、殆ど輝点は観察されなかった。一方、一本鎖DNA修飾金ナノ粒子の分散液に相補鎖を添加した場合、BareおよびAPTESガラス基板の何れの場合も、粒子の吸着に起因する輝点がDFM画像で確認された。Bareガラス基板の場合、DFM像で輝点を確認できた相補鎖の下限濃度は 1 nMであったのに対し、APTESガラス基板では100 fMと4桁の差があった.APTESガラス基板の正電荷が負電荷を帯びたDNA修飾金ナノ粒子の吸着を静電的に促進したことが考えられるが、興味深いことに、相補鎖を添加しない場合では粒子の吸着が殆ど確認されていない。以上の結果は、ガラス基板の表面電荷よりも濡れ性がDNAナノ粒子の吸着特性に強く反映される可能性を示唆している。
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