研究課題/領域番号 |
26410236
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
綿打 敏司 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (30293442)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 結晶育成 / 固液界面形状 / 浮遊帯溶融法 |
研究実績の概要 |
CeをGdサイトに添加したGd2Si2O7(Ce:GPS)単結晶をIR-FZ法により育成した際に生じるクラックの低減を目指した。これまでの実験から固液界面は中心部分で凹んだ形をしており、クラックを誘起していると考えられた。固液界面形状を平坦に近づけることを目指し、様々な条件で溶融帯を形成し、結晶育成を行い、育成中の溶融帯を急冷固化することで固液界面形状を調べた。固液界面形状は界面の高さと半径の比で表される凸度で評価した。固液界面が凹状であるため、凸度は負であるが、これをゼロあるいは正にするような育成条件を探索した。 先ず、結晶育成に用いる原料径を6.5から24.0 mmの範囲で変化させて、界面形状を調べ、凸度の径依存性を調べた。次に、直径が13.0 mmの原料を用いて回転楕円鏡の位置を変化させることで集光位置を変化させ、凸度の集光位置依存性を調べ、最適な集光位置を求めた。更に、最適な集光位置で結晶育成時のランプ出力を5.8から7.0 kWの範囲で変化させた条件で形成した溶融帯の界面形状を調べ、凸度のランプ出力依存性を調べた。 原料径が6.5のmm条件で凸度は-0.8程度と固液界面形状は著しい凹状であった。凸度は、原料径の増加とともに増加した。しかし、原料径を増加させすぎると溶融帯の安定保持が難しくなった。また、集光位置を変化させた場合、従来の位置に比べて光源を近づけると凸度は減少し、集光位置が溶融帯表面に近づくよう光源を遠ざけると、凸度は、増加した。ランプ出力を変化させた場合、ランプ出力を増加させると凸度は増加した。溶融帯の保持が可能な範囲で、なるべく大きな原料径の13mmの原料を用い、集光位置は回転中心から溶融帯表面に近づけた 4 mmの位置で、ランプ出力はより高出力の7.0kWの条件で凸度は最大の-0.3となり、界面の形状はまだ凹状であるが、平坦に近くなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
固液界面の形状を著しい凹状から、平坦に近づけることができたが、それでもわずかに凹状を示していた。目標としていた。平坦あるいはわずかでも凸状にできるような育成条件を見つけ出すに至らなかった。そのわずかに凹状となる条件で結晶育成すると著しい凹状での育成比べると結晶中に生じるクラックは減少したが、クラックを除去できるにまでは至らなかった。更なる育成条件が検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
現状では、結晶育成に利用可能な種結晶がない。そのため、多結晶棒を基点として結晶育成を行っている。そのため、結晶育成は、多数の結晶を基点として始まっている。界面形状が凸状であれば、結晶成長が中心からはじまるため、中心部分の結晶が基点となり、育成結晶断面すべてがシングルドメインになりやすい。しかし、この系では凹状であるため、シングルドメインになり難く、マルチドメインになったままであることがクラックの要因になっているとも考えられる。そこで、格子定数や化学組成が類似した結晶を種結晶として育成することで育成開始時から、シングルドメインの結晶を育成するように努め、それにより、育成結晶中のクラックを抑制できないかを検討したいと考えている。
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