医療用のシンチレータとして用いられているPrを添加したLu3Al5O12(Pr:LuAG)単結晶を坩堝を使用しない赤外線集中加熱浮遊帯溶融(IR-FZ)法で育成するための作成条件の探索を行った。当初結晶育成中に原料棒に発生するクラックのために15時間以上の長時間にわたって溶融帯を安定して形成することは困難であった。原料の焼結条件を可能な範囲で変化させたが劇的な改善を実現できなかった。そこで、原料の焼成をやめ、加圧成形しただけの原料を用いた育成を試みた。その結果、思いがけず、40時間程度の長時間溶融帯を安定に保持できる作成条件を見出すことができた。しかし、育成結晶には多数のクラックが確認された。 育成結晶のクラックの発生は、育成結晶が急冷されることに起因していると推定されたため、その低減を目指した。先ず、育成速度を変化させてその効果を調べた。育成速度を低下させるほど若干クラックが減少した。しかし、劇的に低減することはできなかった。そこで、育成中の育成結晶を効果的に除冷するための保温管を導入し、その位置を最適化することで低減効果の向上を探った。その結果、クラックを大幅に低減できる条件を見出すことができた。 クラックの完全除去にはさらなる育成条件の改善が必要であることがわかった。坩堝を用いないIR-FZ法でクラックのないPr:LuAG単結晶を育成できれば、坩堝コストが削減されることから、検査機器や検査費用の低減が期待される。
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