油水分離技術の高効率化や省エネルギー化は、産業のさらなる発展や環境保全の立場から、極めて重要な課題であると考えられる。例えば、タンカー事故による油の海域での流出が起きた際には、できるだけ速やかに油を回収する必要があり、そのような際には高効率の油水分離技術が求められる。また、オイル資源の採掘においても、できるだけシンプル・省エネルギーの高効率油水分離技術である必要がある。さらに、各種事業所における様々なプロセスにおいても、油水分離は極めて重要なプロセスの一つである。このような背景において、本研究では、酸化チタン光触媒表面が水中で発現する超撥油性を活用した新しい油水分離技術の開発を行っている。化学的に処理された酸化チタン表面の水中における油の濡れ性の調査を行ったところ、シリカ・チタニア複合膜をコーティングした試料表面が、優れた撥油性を示し、上記表面で構成されるフィルターにより、高い油水分離特性を示すことを明らかにしている。また、外部刺激(紫外線照射および超音波照射)が酸化チタン表面の撥油性に与える影響を調査したところ、比較的平滑な酸化チタン光触媒表面において、紫外線照射が水中において油が付着しない状態(超撥油性)へ表面を誘起させ、超音波照射が表面に油が付着する通常の状態(撥油性)へ変換することが分かった。さらに、酸化チタン表面へSiOH基を導入することで水中における撥油性が向上し、酸化チタンフィルターに適用したところ、油水分離特性が向上することが示唆された。
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