研究課題/領域番号 |
26410242
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
山崎 鈴子 山口大学, 理工学研究科, 教授 (80202240)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 可視光応答型光触媒 / 金属イオンドープ / 環境浄化技術 |
研究実績の概要 |
当研究室で開発した多孔質な可視光応答型金属イオンドープ酸化チタン合成法では、用いる金属イオンの種類や添加時期により光触媒活性が大きく異なる。この原因を解明するために、H26年度においては、Pt-TiO2とCr-TiO2を金属イオンの添加時期、ドープ量、焼成温度を変えて合成し、4-クロロフェノールの可視光分解における光触媒活性を評価した。以後、合成反応開始時(pH<1)に金属イオンを添加する場合をA 法、TiO2 コロイド粒子を透析により会合させる途中(pH3)で金属イオンを添加する方法をB 法とする。研究の結果、Pt-TiO2ではA、B両法での差はないこと、Cr-TiO2 をA法で合成すると透析中にCrイオンがTiO2ゾルから消失するが、この損失はB法では抑制できること、両法で合成したCr-TiO2を同じドープ量で比較すると光触媒活性にほとんど差がないことが判明した。また、Pt-TiO2の場合には、Ptドープ量の増加とともに光触媒活性が増加したが、Cr-TiO2の場合には最適ドープ量(0.68~1.3 atom%)が存在した。X線光電子分光法(XPS)の測定結果は、Pt-TiO2にはPt(II)とPt(IV)が含まれ、Cr-TiO2はCr(III)からなり、B法でもA法と同様に内部までCr(III)が取り込まれていることを示した。1.3 atom%Cr-TiO2の場合は、6.6 atom% に比べてCr(III)のXPSピークがブロード化しており、3価以外のイオン種の存在が示唆された。以上のことから、異なる電荷種の共存が可視光応答型光触媒の高活性化に寄与するのではないかと考えられる。 最適な焼成温度は200℃であり、200℃焼成において、1.3 atom%Cr-TiO2は高価なPt-TiO2に匹敵する光触媒活性を示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
詳細にドープ量を変化させて触媒を合成し比較した結果、透析中の金属イオンの溶出が抑制できる点でB法の方が優れているが、同じドープ量で比較すると両方法における差はないことを明らかにした。さらに、可視光応答型光触媒の高活性化に関係する因子は、異なる電荷状態のイオン種の存在であることを示唆する結果も得ており、おおむね予定通りに進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
基本的には、申請書記載のとおりである。クロムよりも安価で汎用性の高い金属である銅イオンのドープによる可視光応答型光触媒の合成に着手する。現時点ではCu-TiO2 はB 法でのみ得られており、その光触媒活性はCr-TiO2 に比較してかなり低い。そこでまず、B 法で取り込み量や焼成温度を変化させたCu-TiO2 を合成し、XPS測定により価数を明らかにするとともに、4-CP 水溶液の分解実験を行って、最適な合成条件を確立する。一方、ルチル型TiO2 粉末をCu(II) 水溶液に浸漬し、CuO 様のアモルファスでグラフトしたCu(II)グラフトTiO2 は、界面電荷移動吸収を利用する新しいタイプの可視光応答型光触媒として注目されている。そこで、文献に従ってCu(II)グラフトTiO2 を合成し、B 法で合成したCu-TiO2 とその光触媒活性や物性データを比較し、高活性なCu-TiO2合成のための指針を得る。 さらにドープと表面グラフトを併用することで、同種、あるいは異種金属イオンをTiO2に取り込ませることにより、さらなる高活性化を目指すことを計画している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
Pt-TiO2、Cr-TiO2粉末のフラットバンド準位を測定するためにメチルビオロゲン水溶液を用いた電気化学的測定も行った。この測定に必要なポテンシオスタットを当初は購入する予定であったが、他研究室所有の機器を借りて実験したので、使用予定額が余った。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度における電気化学的データ測定時に購入が必要となった場合には購入する予定である。
|