白金イオンドープ酸化チタンPt-TiO2のPt含有量を変化させ、X線光電子分光(XPS)スペクトルとX線吸収端近傍構造(XANES)スペクトルを測定した。その結果、含有量に関わらず、バルクにはPt(IV)のみが存在し、表面近傍にはPt(II)とPt(IV)が共存した。XPSスペクトルのピーク分離を行って求めた比γ(Pt(IV)に対するPt(II)のピーク面積比)はPt含有量の増加とともに増加した。一方、比表面積のみが異なるPt-TiO2を合成し、4-クロロフェノール(4-CP)の分解活性を比較したところ、両者の光触媒活性及びγ値はほぼ同程度であった。このことから、光触媒活性は比表面積の影響を受けず、γ値で決定されると示唆された。そこで、Pt含有量を一定に保ちながら、γ値(2.7~21.2)の異なるPt-TiO2を合成し触媒活性を調べたところ、4-CP分解効率がγ値の増加とともに直線的に増加することを見出した。この直線性が、文献で報告されている一般的な方法で合成したPt-TiO2の場合にも成立したことから、Pt-TiO2の可視光活性を制御する因子はγ値であると証明できた。 一方、Cr-TiO2の200℃焼成体の場合、1.6 atom%以上のドープ量では4-CPの分解効率は極めて低く、400℃に焼成すると活性が大きく向上した。400℃焼成体のXANESスペクトルにはCr(VI)に起因するプレエッジピークが観察できた。以上より、Pt-TiO2、Cr-TiO2の光触媒活性は、金属イオンドーパントが混合原子価状態で存在する場合に高活性化すると結論付けることができる。金属イオンが異なる原子価状態で共存することで、可視光吸収により生じた電子とホールの再結合が抑制され、これら電荷キャリアの触媒表面への到達量が増加し、活性の向上に繋がったと考えられる。
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