研究課題/領域番号 |
26410243
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
酒多 喜久 山口大学, 理工学研究科, 教授 (40211263)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | H2O完全分解反応 / 光触媒 / チタン混合酸化物 / 高活性化 / 金属イオン添加 / 可視光応答性 / H2O酸化 / 調製条件 |
研究実績の概要 |
RhyCr2-yO3を助触媒としたSrTiO3光触媒によるH2O完全分解反応についてSrTiO3へのNaイオンの添加効果を検討した。錯体重合法で調製したSrTiO3についてNaイオンを添加すると光触媒活性は著しく向上し、360nm単色光照射下における見かけの量子収率は16%となり非常に高い効率でこの光触媒反応を進行させることのできる光触媒となることが判明した。次に条件の異なる各種SrTiO3を用い同様にNaイオン添加の影響を検討したところNaイオンの添加による光触媒活性の向上はどのSrTiO3でも観測されたが、光触媒活性の向上度合いはSrTiO3の種類によって異なった。さらにNaイオン添加SrTiO3の調製条件の影響についても検討した。これらの中で最も活性を向上させたSrTiO3を用いて各種金属イオンの添加効果について検討したところアルカリ金属イオン、Mgイオンおよび第三属金属(Al, Ga, In)イオンの添加が有効であることが判明した。 RhyCr2-yO3を助触媒としたBaTi4O9光触媒によるH2O完全分解反応についてその錯体重合法による調製条件が光触媒活性に与える影響について検討した。ここでは、この光触媒を調製する上での最適な調製条件について明らかにした。 可視光応答してH2O完全分解反応に有効に作用できる光触媒系構築のための光触媒開発の検討を行った。本研究ではIn2O3に着目しAgイオンを電子消費剤としたH2Oの光触媒酸化によるO2生成反応を検討した。光触媒のIn2O3はIn(NO3)3水溶液を用いたアンモニア沈殿法により調製した。ここではこの方法によるIn2O3光触媒の最適調製条件の検討と金属イオンの添加効果について検討した。Caイオンの添加が光触媒活性に有効であることを見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでのH2O完全分解反応に対する真空紫外域の光照射で応答する酸化物光触媒について、その高活性化を行った結果に基づいて近紫外領域光照射で応答するSrTiO3やBaTi4O9について高活性化の検討を行い、光触媒活性を一桁以上向上させた光触媒の調製に成功した。量子収率は16%(360 nm)で目標としている値(30%, 近紫外光域の光)にはあと一息のところまで来ている。また、この量子収率の値は現在、この領域の光で応答する光触媒によるH2O完全分解反応における量子収率としては最高レベルである。 可視光域の光を用いたH2O完全分解反応についても、In2O3がH2Oの酸化によるO2生成反応において作用できることを見出し、さらに、この光触媒についても高活性化を目指した金属イオンの添加効果を検討したところCaイオンの添加により活性は一桁以上向上することが判明した。
|
今後の研究の推進方策 |
SrTiO3, BaTi4O9光触媒によるH2O完全分解反応については、さらに結晶状態を変化させて光触媒活性の制御を行う。特に、アルカリハライドやアルカリ土類ハライドをフラックス剤として金属イオン添加と同時に処理をし、その効果について検討する。 次に、H2O完全分解反応に対しての酸化物光触媒の高活性化に関してそのメカニズムを触媒化学的および半導体工学的な観点から検討することで知見を得、総括する。 可視光照射下でのH2O完全分解反応についてIn2O3光触媒と組み合わせることができるH2Oの還元側の可視光応答光触媒について、これまでの知見に基づいてRhドープSrTiO3の高活性化や新しい光触媒系たとえばカーボンナイトライドについての検討を行いZスキーム型のH2O完全分解反応ができる光触媒系の構築を目指す。
|