パラジウムナノ粒子内包多孔質ダイヤモンド球状粒子(PdNP@PDSP)触媒のフロー系反応システムへの応用について検討した。フェニルボロン酸とp-ブロモ安息香酸との水系における鈴木カップリング反応によるp-フェニル安息香酸合成をモデル反応とし、PdNP@PDSPの触媒活性を評価した。バッチ式で反応を行った場合、ダイヤモンド表面が水素化されたPdNP@H-PDSP触媒に比べて、ダイヤモンド表面が酸化されたPdNP@O-PDSP触媒を用いたほうがp-フェニル安息香酸の収率が大きく、より触媒活性が高い結果となった。これは、酸化ダイヤモンド表面が親水性のため、担体であるO-PDSP内部の物質移動がより効率的であるからだと考えられる。 続いて、PdNP@O-PDSP触媒をカラムに充填した反応器を作製し、フロー系でのp-フェニル安息香酸合成を試みた。比較として市販のPd担持活性炭(Pd/C)触媒を用いた場合、50-59%の収率となり、2回の繰り返し使用によりフィルターの目詰まりが起きた。また、流出液にPd/Cの一部が含まれていることがわかった。一方、PdNP@O-PDSP触媒を用いた場合、72-78%の収率が得られ、少なくとも8回の繰り返し使用が可能であることがわかった。流出液への漏洩もないことから、カラムを用いたフロー系反応システムに適した触媒材料であることが示された。 水系のフロー系反応システムは、環境負荷が小さく、触媒(希少元素)のロスが少なく、連続的に生成物が得られ実用性が高い。本研究にて開発したPdNP@O-PDSP触媒はそのようなシステムに適した触媒であり、その利用拡大に寄与できるものと期待される。
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