研究課題/領域番号 |
26410247
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
寺島 千晶 東京理科大学, 総合研究機構, 准教授 (00596942)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 液中プラズマ / 光触媒 / 可視光応答 / アンモニア |
研究実績の概要 |
酸化チタンナノ粒子を液中プラズマ処理によって高効率・高速に還元処理することを検討した.対向した電極間にガスを導入することで安定したプラズマ生成が可能となり,安定した還元雰囲気により酸素欠損を導入した可視光応答型光触媒の開発に成功した.また,ガス種に窒素ガスを用いることで,還元処理とともに窒素ドープすることがわかった. 拡散反射スペクトルの結果から,アナターゼ型酸化チタンに比べ,吸収端が可視光域にシフトしていることが確認できた.また,酸素欠損及び窒素導入についてはX線光電子分光法やグロー放電発光分析によって確認した.可視光応答型光触媒の活性は蛍光灯下(8,000 lx)においてアセトアルデヒドガスの分解試験で評価した.未処理のアナターゼ型酸化チタンでは蛍光灯照射後2時間ほどでアセトアルデヒド濃度がゼロとなった.これは蛍光灯に含まれる僅かな紫外線によって作用したものと考えられるが,アセトアルデヒドが中間体まで分解するものの完全分解には至らなかった.一方,窒素雰囲気下での液中プラズマ処理をした酸化チタンナノ粒子では,アセトアルデヒドの分解が速やかに進行するとともに二酸化炭素の発生が見られ,蛍光灯照射後3時間ほどで完全分解することがわかった. 液中プラズマ処理はナノ粒子を焼結や凝集することなく表面のみを処理することができ,従来法に比べ容易かつ短時間での処理によって,酸化チタン光触媒の可視光応答を可能にした.なお,これまでの窒素ドープ酸化チタンの合成には,アンモニアガス雰囲気での高温処理が用いられていた.今回の手法によって温和な室温雰囲気によって窒素ドープが可能となったのは,窒素ガスを導入した液中プラズマ処理過程において,アンモニアが合成されていることを見出し,特許出願を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
蛍光灯の光にも応答する高活性光触媒の製造プロセスを開発した.汚れを模擬したメチレンブルーなどの色素分解ではなく,室内空間で問題となっている揮発性有機化合物であるアセトアルデヒドの分解試験を実施し,二酸化炭素まで完全分解することを実証した.また,可視光応答の要因として酸素欠損と窒素ドープの可能性を実験結果から見出し,その延長線上にアンモニア合成の可能性を示した.本プロセスは高性能可視光応答型光触媒の開発だけではなく,窒素ガスと水中でのプラズマ生成によってアンモニアが合成できる新たな知見を得た.
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今後の研究の推進方策 |
窒素雰囲気下での液中プラズマ処理によって酸素欠損及び窒素ドープがされているのかを明らかにするため,量子ビームによる詳細な解析を実施する.また,酸化チタンの出発原料の違による結晶構造が酸素欠損やドーピングに及ぼす影響も調査する. これらの知見を基に酸化チタン光触媒の可視光応答と活性向上をより高性能化した材料開発を行い,気相への応用だけではなく水中での応用も検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額のうち物品費からパルス電源を追加でもう一台購入することを計画したため,当初予定していた物品費に補てんするために73,455円を繰り越すことを計画した.
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した73,455円は液中プラズマの実験のための消耗品として,電極購入などに充てる.
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