研究実績の概要 |
ZnOS薄膜をRFスパッタリング法、パルスレーザー堆積法、化学気相堆積法によって作製した。RFスパッタリング法では、ZnOとZnSの2つの独立したターゲットを用い、2つのターゲットの間に基板を設置した。ZnO側ではOリッチなZnOSが生成しZnSターゲット側ではSリッチなZnOS薄膜が堆積したが、2つのターッゲ中央では非晶質なZnOS薄膜が堆積した。得られた薄膜はn型であり、酸素と硫黄欠陥がドナーとして働いている。そこで、薄膜堆積時に、酸素ならびに硫黄蒸気を導入し、硫黄昇華温度とキャリアとの関係を調べた。雰囲気中の酸素濃度を変化させたところ、ZnOS薄膜の酸素濃度のみ増大し、p型は得られなかった。これに対して、硫黄を薄膜堆積中に導入するとp型が得られた。XPSによって組成を調べたところ、ZnOS薄膜中にSOxが存在していることが分かった。これより、堆積過程で硫黄を導入すると、格子間に硫黄が導入されていることが明らかとなった。この格子間のSのアクセプター準位は,0.5eVよりも大きく深いアクセプター準位であり、p型発現の直接の原因とはなりえない。浅いアクセプター準位として、格子間Sと格子Oと結合したSO2,SO3が浅いアクセプターの可能性がある。一方、格子間Sは、亜鉛欠陥も同時に生成させており、亜鉛欠陥も有効なアクセプター準位と考えられる。 パルスレーザー堆積法では、ZnOターゲットを硫黄化処理して作製したZnOSターゲットを用いてZnOS薄膜を作製した。薄膜堆積時に硫黄蒸気を発生した場合のみ、p型ZnOS薄膜が得られた。化学気相堆積法により作製したZnOS薄膜は、基板温度が120℃以下の場合にのみ強い蛍光を示した。量子閉じ込め効果が関与しているものと考えられる。
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