研究実績の概要 |
ZnOS薄膜を,スパッタリング法、レーザー堆積法、化学気相堆積法によって作製した。スパッタリング法では、ZnOとZnSの2つのターゲットを用い、二つのターゲットに加える高周波出力を変化させて、ZnOSにおける酸素と硫黄の比率を変化させた。硫黄濃度が30%から70%の領域を除いて、結晶性のZnOS薄膜が得られた。スパッタと同時に硫黄を蒸着させると、Sリッチな条件でp型のZnOS薄膜が得られた。レーザー堆積法では、ターゲットとして、ZnO、ZnOSならびにAgを添加したZnOSを用いた。ZnOSターゲットを用いると、酸素分圧の低い条件下でp型のZnOS薄膜が得られた。得られたp型ZnOS薄膜に対して、X線光電子分光(XPS)測定を行ったところ、過剰のSOxが薄膜中に存在していることが確認できた。導入された過剰なS原子は格子間に存在してS-O結合を生成し、アクセプターとして働く亜鉛欠陥を生成したと思われる。Agを添加したZnOS薄膜は、薄膜堆積過程での酸素分圧が比較的高い場合にp型が得られ、その抵抗率はAgを添加していないZnOSのものよりも2桁程小さくなった。化学気相堆積法では、酢酸亜鉛、H2O、チオ酢酸を原料としてZnOS薄膜を作製した。基板温度200℃以上で作製したZnOS薄膜は、400nmよりも長波長領域で強い光吸収を示し、バンドギャップの減少が認められた。これに対して、基板温度125℃で作製したZnOS薄膜の光吸収はS濃度に関係なく紫外領域で起こった。この薄膜を透過電子顕微鏡によって観察したところ、薄膜が5nm程度の量子ドットの集合体になっていることが明らかになった。S濃度が低いZnOS薄膜は量子サイズ効果により強い発光を示したが、Sの濃度の増加に伴い発光効率は著しく減少した。これは、格子間Sなどの欠陥が過剰に生成しているためである。
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