研究課題/領域番号 |
26410254
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
矢野 将文 関西大学, 化学生命工学部, 准教授 (10330177)
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研究分担者 |
竹谷 純一 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (20371289)
岡本 敏宏 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (80469931)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 有機合成化学 / 機能性有機材料 / 塗布プロセス / 耐熱性 / 有機半導体分子 / 分子設計 / 構造有機化学 |
研究実績の概要 |
本研究では特異な物性を有するDNF-V骨格を用いた有機発光トランジスタ材料の開発に取り組み,「印刷プロセス可能な高性能有機発光トランジスタ材料の創製」を最終目標とする.今年度は、非対称のパイ系を有する誘導体(DNF-L, DNT-L)の効率的合成法およびその基礎物性について検討した。これらの合成にも、我々が開発した効率的合成法が適用可能であり、安価にグラムスケールでの合成が可能であることが示された。 DNF-L, DNT-L骨格の自己集合挙動をコントロールする要因を明らかにするために、これらの結晶構造を明らかにした。フェニル基の導入位置によって、結晶構造が制御されていることが明らかになった。さらに基礎物性を検討し、DNF-L, DNT-Lが一般の有機溶媒に対して、非常に高い溶解度を持っていることを明らかにした。これは従来の化合物(DNF-V, DNT-V)と比較して、100倍以上の向上であり、塗布プロセスを用いる有機半導体分子に必要な溶解度向上の分子設計方針が明らかになった。現在、DNF-L, DNT-Lの基礎物性、デバイス特性をさらに詳細に検討している。 種々の置換基を有するDNF-V誘導体を効率的に合成するために、臭素原子を有するDNF-V誘導体(Br-DNF-VVおよびBr-DNF-VV)を設計し、グラムスケールで合成・単離・精製することに成功した。通常の有機合成の手法を用いることで、この臭素原子をアルキル基もしくはアリール基に容易に置換可能であることを明らかにし、新規のDNF-V誘導体を合成した。これらの基礎物性を測定し、熱物性および固体発光強度において、置換基の構造が熱物性、光物性に与える影響について予備的知見を得た。現在、詳細な検討を行なっている。今後は、今年度に系統的に合成した化合物の基礎物性を詳細に検討し、より高い性能を示すための分子設計方針の洗練を図る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、今年度に種々の置換基を有する化合物を短いステップ数で合成・単離・精製の手法を確立することができた。この方法を用いることで、ヘテロ環をもつDNF-V誘導体なども、グラムスケールで行えることがわかった。デバイス物性を検討するためには、非常に純度の高いサンプルを得る必要があるが、今年度、我々が開発した手法により、大スケールで目的化合物を得られることがわかった。特に精製段階での手間を劇的に減らすことができた。また、芳香環をもつDNF-L, DNT-L誘導体では非常に高い溶解度(実用化に不可欠)を持たせるための分子設計方針を見い出せたことは大きな成果である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、新たに合成した化合物の各種物性を検討する。さらにこれらの測定で得られた結果を次世代の誘導体の設計にフィードバックする。分子設計方針をさらに精緻に洗練させ、本研究の最終目的である「印刷プロセス可能な高性能有機発光トランジスタ材料の創製」を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
補助事業期間内に目的を達成するために、平成26年度に得られた結果を踏まえて、平成27年度は目的化合物をより容易に、グラムスケールで得る方法を模索し、より洗練された分子設計方針に基づいた目的化合物の確保を重点的に行なった。この結果、平成28年度はこれらの化合物の性質の解明に集中して取り組むことができるようになった。合成ルートの再検討を行ったため、これらの実験に用いる予定だった経費の一部は、予定より少なく済んだので、残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の研究を通して、基礎物性を明らかにするための研究方針、研究体制が確立できた。平成27年度に使用しなかった164305円および平成28年度の配分は、今年度に合成した化合物のスケールアップ合成および、それらの性質を明らかにするための消耗品購入に用いる。
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