研究実績の概要 |
本年度は,多孔質材料の圧縮波とせん断波の計測と速度推定を行った。推定結果として得られた圧縮波速度とせん断波速度,また,別測定で求めた密度を用いて,試料の弾性係数を算出した。この結果を使用して,骨の空隙率推定で使用する線形多孔質モデルの縦弾性係数と剛性率間の比例定数を算出し,線形多孔質モデルの適用限界について確認した。 圧縮波とせん断波の計測で使用した試料には,ソリッドリジットポリウレタンフォームを使用した。空隙率の異なる3種類(27.5%, 42.0%, 56.5%)でそれぞれ,寸法が縦4cm×横4cmで長さが2cm,3cm,4cm,5cm,6cm,7cm,8cmの長方体試料を用意した。これらに周期2µsの両振れの矩形波を入射信号として,各空隙率で7本の応答波形を取得した。 速度推定では,速度解析法として,周波数センブランス法(FSM)と最尤推定法(MLM)を用いた。両者の圧縮波速度の推定結果には大きな違いは見られなかったが,せん断波の結果に違いがみられた。当然のことながら,弾性係数の値はこの違いが反映したものとなり,どちらの速度解析法によるせん断波速度が正しいかを見極める必要が生じた。これに対処するために,ソリッドリジットポリウレタンフォーム製の丸棒を伝わるガイド波の理論分散曲線を周波数センブランス法(FSM)と最尤推定法(MLM)で得た速度と別測定で求めた密度を使って計算し,ガイド波の分散特性との整合度から最尤推定法(MLM)で得られたせん断波速度の方が高精度であると判断した。 最尤推定法(MLM)で得られた圧縮波速度とせん断波速度で線形多孔質モデルの縦弾性係数と剛性率間の比例定数を調べると,空隙率27.5%, 42.0%, 56.5%の試料に対して,0.348,0.347,0.355となり,空隙率が大きくなるとモデルの線形性は崩れることがわかった。
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