研究課題/領域番号 |
26420003
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
竹田 陽一 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40374970)
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研究分担者 |
市川 裕士 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80451540)
阿部 博志 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30540695)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 応力腐食割れ / 酸化 / 高温水 |
研究実績の概要 |
軽水炉発電プラントにおける構造材料の応力腐食割れの進行には固相酸化を含めた酸化反応が本質であり、その反応と元素拡散には粒界、ひずみ分布など多様な因子が作用する。これまで個々の素過程についてはいくらか解明が進んでいるが、実験的難しさもあり、全体過程は十分に解明されていない。本研究では別の視点として、全体反応の結果としての皮膜/合金界面の起伏に着目し、その形態を定量的に特性づけることで割れの予兆検出とき裂発生に至るまでの全容を解明していく。3年次計画のうち、2年次である平成27年度の実績の概要は以下の通りである。 1.初年度から実施している高温水中に形成されたステンレス鋼表面多層皮膜に対し、酸化局在化パラメータの定量評価を進めた。具体的には分布のヒストグラムから平坦度を、局所的酸化部の形態から突出酸化部内方深さ、突出酸化部鋭さを数値化し、酸化時間に伴う起伏回復傾向、起伏成長の傾向の時間依存性を得た。 2.試験後の試験片表面皮膜のX線光電子分光分析法による深さ方向元素分布の評価を一部で行った。これまでに、ひずみ付加により酸化状態にあるクロム量の分布状態が変化することが分かっていたが、同様の傾向が電位を変化させた場合でも確認できた。今後は、電気化学インピーダンス計測結果と併せて皮膜内点欠陥を想定した解析を行い、元素分布結果と併せて、皮膜内動種の特定を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた3つのサブタスクにおいてそれぞれ当初の計画通りの結果が得られた。 X線光電子分光分析法による分析においては、ひずみ付加を受けた試験片では、すべりや粒界など起伏部が存在し、併用しているArイオン銃によるスパッタリングが均一に行われていない様子がうかがえた。そのため、次年度においては、局所的な微細加工による断面抽出を併用した分析の必要もあると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き試験後の試験片におけるクロム量の電位依存性とひずみ付加に着目した評価を進める。 これまでの報告に基づけば、皮膜直下の合金側で加速酸化が生じている可能性が示唆されているが、界面近傍でのクロム濃度を調査することにより、合金側影響因子のみでなく、皮膜側での物質移動にも基づく加速酸化メカニズムを調査する。ここで計測されるクロム濃度はインピーダンス結果と併せて検討することによって、界面近傍に点欠陥が濃縮するか否かの判断の指針となる。X線光電子分光分析法によるマクロ的な情報はインピーダンス計測の結果評価において重要なパラメータとなるが、粒界やすべり部の影響も評価すべきであるため、局所的な分析も併用することも検討していく。
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