(1) 電磁波吸収体の開発を目指して,農業系副産物である落花生渋皮と大豆皮の焼成粉体を用いたプラスチック系複合材料を抄紙法によって作製した.そして,電気的特性を評価し,植物由来炭素の多孔質構造が電磁波吸収に及ぼす影響について検討した.その結果,①プラスチック系複合材料の導電特性は粉体配合率の増加に伴い増加し,特に落花生渋皮を用いた試料で最も優れた導電特性を有することがわかった.また,電磁波吸収特性は粉体の粒径の増加に伴い増加した.②測定周波数域を高周波域まで拡大し,幅広い周波数域において各プラスチック系複合材料の電磁波吸収特性の把握を行った.その結果,30GHz 以上のミリ波域において落花生渋皮と大豆皮を用いた試料は少ない配合率で優れた電磁波吸収特性を示すことがわかった. (2) 電磁波吸収体を生産性に優れる射出成形により製造し,射出成形製造シート材の電磁波吸収特性を測定した.射出成形製造シート材の活用範囲を広げるために,従来のセンチ波域の測定だけでなく,ミリ波域の電磁波に対する吸収特性についても評価した.その結果、射出成形製造シート材はセンチ波域とミリ波域の電磁波に対して電磁波吸収体として有効であることが示された. 以上の結果から,多孔質構造を持つ植物非食部の炭素粉体を配合したプラスチック複合材料が電磁波吸収体用のフィラーとして有用であることが示された.今後は具体的な工業製品への応用を検討していくことで,さらに新たな展開に繋がると期待している.
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