研究実績の概要 |
高温構造部材に対する高精度余寿命診断法を確立して,国内外にある関連試験法の規格化・標準化を目指すことを目的とした本研究では,2.25Cr-1Mo鋼及び実機ボイラー水冷管(STBA20, 0.5Cr-0.5Mo鋼相当品)を供試材料として,スモール・パンチ・クリープ(SPC)試験及びミニチュア・クリープ(MC)試験を異なる雰囲気(大気,真空,Arガス)内で実施し,1000時間までのクリープ変形特性と破断寿命を求めた。その結果,以下の結果を得た。 1.真空中でのSPC試験では破断寿命が大気中のそれの約2倍となった。これは試験中,SPC試験片表面への酸化皮膜形成が,試験片とパンチャー部間の摩擦係数の変化,および減肉を引き起こした結果による。 2.MC試験では,試験標点部と引張り部を分離し,電子ビーム(EB)で溶接したMC試験片を製作して,クリープ試験を行った。試験標点部と引張り部を一体物化したMC試験片でのクリープ試験結果と比較検討した結果,両者に大きな差異はなかった。これより,実機高温構造物から少量の評価対象部位をサンプリングし,EB溶接MC試験片を用いると,対象材のクリープ特性が得られることを明らかにした。 3.同一の破断時間に対して,SPC試験の試験荷重Pと,MC試験および単軸クリープ試験での初期応力σの比P/σは,1.8mm2~2.4mm2となり,パンチャーの直径に依存するものの,一定の関係となった。この関係から,SPC試験は単軸クリープ試験の代替となり得ることを示した。 4.6万時間および23万時間使用されたボイラー水冷管を試験材としてSPC試験を行い,残存寿命を2種類の時間-温度-パラメータ(TTP)法で推定した。その結果,対象のボイラー水冷管は十分健全であることを示した。
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