研究課題/領域番号 |
26420010
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
樋口 理宏 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (50455185)
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研究分担者 |
宮崎 祐介 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (70432135)
立矢 宏 金沢大学, 機械工学系, 教授 (10216989)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 衝撃工学 / 生体工学 / 高分子材料 / エポキシ樹脂 |
研究実績の概要 |
平成27年度に実施した研究内容および成果は以下の通りである. (1)プロテクター装着時の人体への衝撃応答を評価するために,人体を骨部と皮質部により構成される単純な形状に近似し,それぞれの密度および等価弾性係数について文献調査を行い,人体に近い音響インピーダンス特性を求めた.さらに,スポーツにおける衝撃現象を簡便な形式で模擬した動的有限要解析により,プロテクターを装着したダミー体に負荷される衝撃応答を評価した.同解析により,スポーツにおける衝撃現象の時間スケールを明らかにするとともに,生体衝撃を模擬した衝撃試験において,被衝突体となるダミー体は,鋼材やアルミ材を用いた場合でも十分に人体の衝撃応答およびプロテクターの衝撃低減効果を評価できることがわかった. (2)平成26年度に得られた軟質エポキシ樹脂の弾性率の時間依存性とスポーツ動作・衝突現象の時間スケールを照らし合わせることで,スポーツ用柔軟プロテクターを試作した.ここでは,関節部への適用を念頭に置き,軟質エポキシ樹脂を外殻としたニーサポーターを作製した.さらに,二重振り子式柔軟性評価試験機を設計・製作し,同試作プロテクターの柔軟性を評価し,市販のバレーボール用ニーサポーターと同等の柔軟性を確保できることを示した. (3)試作プロテクターが衝撃変形下で所望の機能をはたしているかを確認するため,簡便な予備試験により同プロテクターの衝撃特性評価を行った.ここでは,鋼板および鋼管上に設置したプロテクターに対して,インパクターを自由落下により衝突させ,高速度カメラによるプロテクターの変形評価および感圧紙による圧力分布測定を行い,開発した試作プロテクターが衝撃変形下で硬化することで内殻材を一様圧縮することで衝撃力を分散するとともに,衝撃力を低減できることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度においては,(1)生体衝撃を模擬した数値解析・柔軟プロテクターの設計,(2)柔軟プロテクターの作製と柔軟性評価,(3)柔軟プロテクターの衝撃特性評価(予備試験)を研究実施計画としていた.本研究課題が目指す「高速変形時のみ外殻が硬化するスポーツ用柔軟プロテクター」を開発,実現する上で,上記の計画を順調に遂行することができており,また次年度の研究実施に向けて十分な知見および研究ノウハウを蓄積することができたため,順調に研究を推進できているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究成果により,プロテクターの変形挙動評価および人体の衝撃応答を評価する上で,ダミー体に用いる材料は鋼材・アルミ材で十分であることが明らかとなった.そこで,平成28年度は,生体衝撃を模擬した衝撃試験において,曲面を有する鋼管・アルミ管によりダミー体を構成し,実際のスポーツ用途を想定した条件下で,柔軟プロテクターの装着による人体への衝撃力低減効果を評価する.さらに,硬質樹脂やダイラタンシー現象を用いた衝撃吸収材から構成される市販プロテクターに対しても同様の試験を行い,本研究で提案する柔軟プロテクターの優位性を示す. また,より高い衝撃低減効果を得ることを目的として,炭素繊維クロスを軟質エポキシ樹脂に複合した外殻材料を開発し,その効果について検討を行う.さらに,提案する柔軟プロテクターの用途を拡張するため,装着性に優れる非可動部用のプロテクターを試作し,装着性および衝撃特性評価を行うとともに,スポーツ用途だけでなく日常生活で違和感なく装着できるプロテクターとしても検討を行う. 以上の結果より,本研究で提案する高速変形時のみ硬化する柔軟プロテクターの工学的応用範囲を明らかにし,スポーツ産業および医療福祉産業における実用化のための資料としてまとめる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の購入量が当初予定より少なく済んだため.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の消耗品費等として利用する.
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