三年間の科研費(c)の最終年度である平成28年度には,二段式軽ガスガンを用いて加速させた直径 1mmをアルミニウム合金球を炭素繊維強化複合板(CFRP板)に衝突させた.CFRP板には,UD材を擬似等方になるように配向 [45º/45º/0º/0º/-45º/-45º/90º/90º]sに16層,積層した厚さ0.7 mmの板を用いた.「研究実施計画」に従い,実験方法は,ISO規格(11227:2012)に準拠したアルミニウム合金球(A2017)を用いて実験を行った.試験片の材図は,サイズは75 mm ×100 mmとし,高崎量子応用研究所のコバルト60ガンマ線照射施設にて照射を行い,線量率1 kGy/hで500時間照射, 10 kGy/hで1000 時間照射した2種類のCFRP板(照射線量 0.5 MGyおよび10 MGy)を準備した.なお,ガンマ線照射中は,空気の影響を避けるため,真空のガラスアンプル中に封入して,照射を行い,空気の影響を調べるために,真空のガラスアンプル中に封入していない材料も用いた. 比較的低速度の2.5 km/sにおいては,照射量 0.5 MGyのとき,飛翔体による貫通孔が大きく,つまり破損領域が大きくなり,さらに照射量を増やした 10 MGyのときでは,照射無しと貫通孔がほぼ同じになり,破損領域が照射量に比例せず,複雑な挙動を示したことをX線CTにより確認した.一方で,高速領域の5 km/sでは,照射量に関係なく貫通孔径はほぼ同じであった.実験チャンバーから回収した破片を分析したところ,2.5 km/sでは,照射量とともに,ターゲット後方へ噴出した破砕物のサイズは小さくなり,回収量は少なくなった.5 km/sでは,破砕物に照射量との傾向はみられなかった.材料の化学変化を,フーリエ変換赤外分光法(FTIR)およびラマン分光により分析したところ,フーリエ変換赤外分光法(FTIR)では,飽和アミンもしくはベンゼン環に相当する1600cm-1において,明確な変化がみられた.
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