研究課題/領域番号 |
26420014
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
屋代 如月 岐阜大学, 工学部, 教授 (50311775)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 局所不安定 / モードIき裂 / 分子動力学シミュレーション / シリコン / bcc鉄 / hcpMg |
研究実績の概要 |
モードI型貫通き裂の分子動力学シミュレーションを,前年度と同様に平板状周期セルによりダイヤモンド構造のシリコンと,bcc構造のFe,そして今年度は新たにhcp構造のMgについて行うとともに,き裂先端の局所格子不安定性を原子弾性剛性係数(AES)の正値性から検討した. bcc-Feの検討では,き裂進展時の不安定領域の寸法がほぼ一定であるという昨年度に得られた知見をさらに一般化するため,周期セルの寸法を様々に変化させてき裂の力学状態を変えた検討を行った.仮定どおり,力学状態が変わってもき裂進展時の不安定領域の寸法は不変であるという知見が得られた.さらにAESの固有値を調べた結果,き裂進展時の第一固有値の値がほぼ一定であることを見出した. ダイヤモンド構造のSiについては,昨年度検討した[001](010)き裂に加えて, [001](110), [112](111)の三つの結晶方位で検討した.Feと異なり,負のAES原子数の変化ではき裂進展を予測できなかったため,固有値に着目した詳細な検討を行った.その結果,き裂進展の直前,第一固有値が大きな負値を示す前駆的な不安定挙動があることを見出した.またその固有ベクトルを調べた結果,[001](010)き裂はモードI, [001](110)き裂はモードII, [112](111)き裂はモードIII方向への不安定であることを明らかにした. 今年度はhcp構造のMgについても検討をスタートさせた.柱面をき裂面とした予備解析では,き裂先端から塑性変形が多数発生した後,交差する部分でボイドが発生し最終破断に至ったため,き裂進展時のAESについては検討できなかった.現在は3つの結晶方位でシリコンやFeで培ってきた経験を元に詳細に検討している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金属の解析では,局所不安定領域の寸法に焦点を当てて検討を進めてきたが,シリコンではそれが当てはまらず,固有値を調べることでき裂進展前に生じる第一固有値の不安定挙動や,固有ベクトルによる変形モードなどが明らかとなった.このように,AESが負の原子数・領域を調べるだけでなく,その固有値・固有ベクトルを検討する手法を確立したので,次年度以降の方向性が明確となっている.
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今後の研究の推進方策 |
bcc, ダイヤモンド構造,fccそしてhcpと,計画していた結晶構造について,一通り検討して今後の見通しが得られたものと考える.破壊力学パラメータとの比較を行うために,大規模シミュレーションによる有限板中のき裂での検討を行う.理想的なき裂ならば,原子シミュレーションにおけるき裂進展も破壊力学に従うことが示されているが,き裂先端の形状が様々に変化したときの適用可能性を,AESの正値性から検討する.また,当初の計画通り,熱陽動の影響を明らかにする,長時間平均・多数の試行による検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費の使用が予定より少なかったため
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の旅費に使用する
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