研究課題/領域番号 |
26420018
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
山田 宏 九州工業大学, 生命体工学研究科(研究院), 教授 (00220400)
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研究分担者 |
坂田 則行 福岡大学, 医学部, 教授 (20134273)
森田 康之 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90380534)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 石灰化 / 粥状動脈硬化 / ひずみ / X線CT / 伸展 |
研究実績の概要 |
ヒト胸部大動脈の剖検例を採取して,粥状動脈硬化の生じたプラーク内皮面の変形に対して,プラーク内部に生じた石化化が及ぼす影響を実験的に調べた.その際,X線CTスキャナーを用いてプラークの石灰化像を可視化して体積を調べた.また,プラークを中心に配置した長方形状の標本を円周方向に伸展しながら内皮面上の粒子の運動をカメラで撮影し,デジタル画像相関法を用いて内皮面のひずみ分布を調べた.その結果,プラーク内の石灰化領域が成長して大きくなると,プラーク表面のひずみが顕著に低下する傾向が見られた.特に,石灰化領域が線維性被膜にまで達しているように見受けられる場合には,内皮面のひずみは非常に小さな値を示した.一方,石灰化のないプラークの場合には,大きな石灰化がある場合のように小さなひずみが内皮面に生じることはなかった.さらに,標本を脱灰化して作製した切断面を観察した結果,CT画像で見られた大きな石灰化領域では,その領域が欠落した様子であった.本実験結果は,プラーク領域の変形の直接測定と石灰化領域の3次元的可視化を実現しており,その相関は医用画像を用いた診断の基礎的知見を与える. 薄膜状試験片の伸展試験に関しては,まず,クリオスタットで薄膜作製条件を調べた結果,数十ミクロンの厚さの試験片を作製すると扱いやすいことがわかった.また,実体顕微鏡下での水平方向の伸展装置を用意して,薄膜試験片の取り付けを行った結果,試験片の乾燥が進行するために,空気中での伸展試験は不向きであると判断した.そこで,鉛直方向の伸展試験ができる治具を設計することにした.また,高速度カメラについては,CCDカメラおよび顕微鏡筒への取り付けを行って,どちらの場合でも測定可能であることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度実施を予定していた線維性被膜の伸展試験について,伸展装置の試作・検証の段階にとどまっている.一方,来年度に本格的に実施する予定のプラークとその周辺領域の伸展試験は概ね完了した.
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今後の研究の推進方策 |
薄膜試験片の伸展については生理食塩水内で鉛直方向に伸展することにして,乾燥による力学特性の変化の問題を回避する.石灰化領域に対しては,マクロレベルの3次元形状を取り込んで,有限要素解析を実施する.また,バルーンによる血管壁拡張の実験については,カメラと運動解析ソフトウェアに組み合わせによる解析精度を十分に調べたうえで,測定の有効性を判断する.
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次年度使用額が生じた理由 |
線維性被膜の伸展試験の実施が遅れているため,予算を来年度に繰り越すことになった.
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次年度使用額の使用計画 |
線維性被膜の伸展試験装置の製作・実施や組織観察の実施に予算を利用する.
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