研究課題/領域番号 |
26420020
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
眞山 剛 熊本大学, 大学院先導機構, 准教授 (40333629)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 材料力学 / 連続体力学 / 計算力学 / 構造材料 / マグネシウム合金 |
研究実績の概要 |
平成27年度は「系統的調査フェーズ」と位置付けられており,ヘテロ構造の定量的評価と実験に対応した数値解析を実施した.具体的な実施内容は下記のとおりである. 【加工および熱処理による微細構造付与(実験・観察)】押出加工および熱処理(溶体化,焼鈍しおよび時効)による欠陥密度,集合組織および析出物密度の制御を実施した.さらに,得られた試料を光学顕微鏡,走査型電子顕微鏡およびEBSD解析を用いて複相組織の形態,配置および結晶方位分布を調査した. 【力学特性の評価(実験)】組成および加工条件の異なる数種の材料に対して,単軸負荷試験,繰返負荷試験および負荷-除荷試験による加工硬化挙動と擬弾性挙動の評価した.また,熱処理条件を制御することにより,第二相の体積分率を変化させた材料を対象として,第二相が各力学挙動に及ぼす影響を調査した. 【微細組織の定量的評価(観察)】X線回折による集合組織測定を行い,さらに得られた底面極点図を利用した集合組織の簡易的な評価法を構築した.また,顕微鏡観察により得られた組織像を用いた二相材の組織定量化法を構築し,複相組織における異相境界間隔と第二相体積分率の関係を調査した.さらに,双晶領域の発達と力学特性の関係を評価した. 【加工解析およびヘテロ構造材の変形解析(数値解析)】上記微細構造の定量的評価により得られた平均相境界間隔を導入し,二相鋳造材の流動応力を定量的に表現可能となった.また,押出材を想定した軟質相と硬質相からなる二相材の等二軸圧縮負荷解析を行い結晶粒内方位差の発達を評価した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画に沿った実験,観察および数値解析をバランスよく実施したことに加えて,昨年度に実施を見送った加工材を対象とした評価,さらに平成28年度に予定していた変形挙動の理論化と数値解析への反映による成果も早期に得られ始めていることから,当初計画以上の成果が得られていると判断することができる.各研究項目における達成度は以下のとおりである. 【加工および熱処理による微細構造付与(実験・観察)】当初計画通り,加工熱処理を系統的に行うと共に,微視構造解析を実施している.ただし,1部の材料において焼鈍しによる欠陥密度の変化よりも前に相変化が生ずることが明らかになったため,実験計画を修正している. 【力学特性の評価(実験)】当初計画通り,系統的な力学特性評価を実施した. 【微細組織の定量的評価(観察)】当初計画通り,加工材を対象とした組織の定量的評価を実施すると共に,昨年度に引き続き鋳造材の評価も実施した.その結果,本年度の研究により集合組織の簡易的な評価法を新たに考案することが出来た. 【加工解析およびヘテロ構造材の変形解析(数値解析)】当初計画で予定していた変形解析の実施に加えて,上記組織評価結果で得られた情報に基づく理論構築とその数値解析の適用を開始し,具体的な成果が得られ始めている.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度までに組織制御,力学特性評価,微細組織評価および力学解析の基礎的手法が確立すると共に,加工熱処理が組織に及ぼす影響,鋳造材および加工材の変形挙動に関するデータが十分に蓄積されたことから,最終年度である平成28年度は,これまでの実験観察により得られた知見を数値解析へ導入することにより,最終目標である複相マグネシウム合金におけるヘテロ構造形成過程と力学特性発現機構の解明の達成を目指す.具体的な実施項目は下記のとおりである. 【微細構造形成機構解明のための追試験と理論構築】組成と鋳造組織および加工熱処理条件と加工熱処理組織の関係に関する理論構築し,微細構造形成機構の解明を目指す.ここで,理論構築に際して不足しているデータに関連する加工熱処理や組織観察を追加で行う. 【特性発現機構解明のための追試験,理論構築および数値解析への導入】微細構造と力学特性の関係に関する理論モデルを構築し,数値解析に導入する.ここで,理論モデル構築に際して不足しているデータに関連する材料試験等の追加実験を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
年間を通して計画的に予算を執行したが,わずかではあるが繰越額が生じた.データバックアップ用のストレージの購入も検討したが,最終年度に追試験を実施することが本研究の目標により効果的であると判断し,残額の繰越しを決めた.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に生じた繰越金は追試験のための消耗品費として使用する.
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