研究課題
本研究では、高サイクル疲労強度特性の向上を目指し強変形加工材の微視組織構造とき裂に関わる損傷の物理的背景、き裂進展に及ぼす組織の影響と力学的背景を明らかにするため、① 「き裂の挙動と微視組織構造の関連」、②「高サイクル領域の耐疲労特性の改善」、③「実用銅合金材料の疲労強度に及ぼす組織の影響」について検討した。①については,高応力下のき裂は、ECAP最終せん断面と関係した最大せん断応力方向に形成したせん断帯を起点に発生し、最終せん断面に平行に進展すると共に特異なき裂面形状を呈することを明らかにした。さらに、これらの原因がき裂先端の面内せん断変形に起因することを応力拡大係数を計算して力学的に明らかにした。一方、低応力下では、結晶粒の粗大化により通常寸法の結晶の材料と同様にすべり帯からき裂が発生し主応力方向に垂直に進展する。②については、組織の非平衡度を下げることにより耐久限度の向上を試みた。具体的には低温焼なましおよび累積ひずみ量の変化が耐久限度に及ぼす影響を調べ、耐久限度の10%程度の向上を得た。③については、コネクターなどの電子材料として広く使用され,現在も盛んに開発が行われているCu-Ni-Si系合金の疲労強度と組織構造の関係に関係して、疲労き裂の起点が結晶粒界であり、その後隣接する粒内のすべり方向に沿って進展することを明らかにした。また、時効条件により発生する不連続析出相が疲労強度に及ぼす影響を検討し、機械的性質に悪影響を及ぼす不連続析出相が疲労強度に無害であることを示すと共にその物理的背景を明らかにした。なお、不連続析出相については、強変形加工を行い組織を制御することにより、通常組織の強変形加工に比べ引張強さが30%向上することを明らかにした。
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