研究課題/領域番号 |
26420022
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
池田 徹 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (40243894)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 界面 / 応力拡大係数 / パワーデバイス / 破壊靭性値 / 分子静力学 / ナノスケール界面 / 固有値解析 |
研究実績の概要 |
(1)3次元のなめらかでない異方性異種材接合角部のスカラーパラメーターの解析手法の開発 すでになめらかでない異方性異種材接合角部のスカラーパラメーターを解析する手法を開発していたが,特異性の大きな場合に正しいスカラーパラメーターが得られない問題があった。そこで,解析を行う際の固有ベクトルの分布を調べたところ,このような場合には存在し得ない値を示していることが解った。解析のメッシュを細かくするとやや改善が見られたことから,さらに細かなメッシュを用いて解析を行う予定である。 (2)パワー半導体における樹脂封止角部からのはく離強度の評価 パワー半導体の熱サイクル疲労特性を封止樹脂と基板との接合角部の応力拡大係数で評価する方法と封止樹脂と基板の間に限界き裂を想定して,その応力拡大係数で評価する方法について検討した。その結果,接合角部の応力拡大係数で評価する手法は,温度や種類によって変化する封止樹脂の弾性率のために角部の特異性指数そのものが大きく変化し,その応力拡大係数での評価は望ましくないことが解った。そこで,封止樹脂と基板の間の限界き裂について評価することとし,封止樹脂と基板の間にあるき裂の破壊靭性値の評価を行っている。 (3)ナノスケールでの異種材接合角部近傍と接合界面上の応力場を近似する弾性モデルの開発 分子静力学を用いて,レナードジョーンズポテンシャルによる仮想異種材料間の界面応力を解析し,これと異方性異種材界面のミスフィット転位周りの弾性解との比較を行った。その結果,ミスフィット転位間が離れている時に,ミスフィットから有る一定距離での応力が弾性解で近似できることを見出した。しかし,ミスフィット転位が近すぎる場合や,ミスフィット転位からある程度以上離れた部分の弾性解は,分子静力学の結果と乖離した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)3次元のなめらかでない異方性異種材接合角部のスカラーパラメーターの解析手法の開発 すでになめらかでない異方性異種材接合角部のスカラーパラメーターを解析において,特異性の大きな場合に正しいスカラーパラメーターが得られない問題を解析できるようにすることが本年度の目的であった。そこで,解析を行う際の固有ベクトルの分布を調べたところ,このような場合には存在し得ない値を示していることを発見し,解析誤差の影響による可能性が大きいことを確認した。この解決法としては,さらに細かなメッシュ分割で解析を行うことであるが,メモリーの限界に達したためにマトリックスのスパース性を利用して,使用メモリーの大幅な削減に取り組んでいる。プログラムの改良はまもなくおわる予定で,更に細かなメッシュで解析を行う。計画では,26年度中にこの問題を完全に解決する予定であったので,やや遅れている。 (2)パワー半導体における樹脂封止角部からのはく離強度の評価 パワー半導体の熱サイクル疲労特性を評価する方法としては,封止樹脂と基板の間の限界き裂について評価することが望ましいことが判明したので,封止樹脂と基板の間にあるき裂の破壊靭性値の評価を行っている。すでに,これまでのパワーデバイスに使用されている封止樹脂や高耐熱封止樹脂の場合の界面き裂の剥離靭性を計測しており,概ね計画通りに進展している。 (3)ナノスケールでの異種材接合角部近傍と接合界面上の応力場を近似する弾性モデルの開発 分子静力学を用いて,レナードジョーンズポテンシャルによる仮想異種材料間の界面応力を解析し,ミスフィット転位間が離れている時に,ミスフィットから有る一定距離での応力が弾性解の重ね合わせで近似できることを見出した。この研究も概ね計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)3次元のなめらかでない異方性異種材接合角部のスカラーパラメーターの解析手法の開発 現在,マトリックスのスパース性を利用して,使用メモリーの大幅な削減に取り組んでいるところであるので,プログラムの改良が終われば,更に細かなメッシュで解析を行い,解析の難しい問題は特異性による解析精度の低下であったことを証明し,論文にまとめる。この問題が解結したら,本手法を熱応力問題が解析できるように改良を行う。 (2)パワー半導体における樹脂封止角部からのはく離強度の評価 すでに,これまでのパワーデバイスに使用されている封止樹脂や高耐熱封止樹脂の場合の界面き裂の剥離靭性を計測しているので,さらに広範囲な樹脂と温度範囲における破壊靭性値の計測を行う。また,模擬パワーデバイスの剥離が基板の角部に発生することが解っているので,基板の角部にシリカフィラーの最大直径程度の扇型の予備剥離を想定して,温度サイクル時の応力拡大係数範囲を解析する。この応力拡大係数範囲と各温度での剥離靭性の測定値より,熱サイクル寿命の簡易予測を行う方法を検討する。 (3)ナノスケールでの異種材接合角部近傍と接合界面上の応力場を近似する弾性モデルの開発 分子静力学を用いて,レナードジョーンズポテンシャルによる仮想異種材料間の界面応力を解析した結果とより整合性の良い弾性解の導出に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通りに使用したが,最後に千円以下の少額の残額が生じたので,無理に使用することをせず次年度に使用することにしたものである。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は,前年度の残額と合わせて,主として研究のための計算機およびその消耗品とソフトウエアの購入を中心に使用する計画である。
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