研究計画にしたがい,機械的荷重下と熱的荷重下における,異方性異種材三次元接合角部のスカラーパラメーターの解析手法を開発した.この成果により,異方性異種材三次元接合角部近傍の応力場をスカラーパラメーターで近似することが可能となった.現在,この成果をさらに発展させ,三次元接合角部からの破壊やはく離の支配パラメーターとなるような応力拡大係数の定義の確立に向けて研究を進めている. 当初,この方法をパワーモジュールの異種材接合角部からの評価に利用しようと計画していた.しかし,パワーモジュールにおける金属と樹脂の接合角部においては,樹脂の弾性係数が温度によって著しく変化するために,接合角部自体の応力の特異性指数自体が大きく変化し,スカラーパラメーターだけでは,評価が困難であることが判明した.そこで,特異性指数が常に0.5である限界き裂を異種材接合角部の近傍に想定し,その応力拡大係数と接合試験片を用いて計測したはく離靭性値を比較することによって,どの温度でのはく離可能性が最も高くなるかを評価した. また,結晶の上にエピタキシャル成長した,ナノ材料の接合界面におけるミスフィット転位周りの応力場を分子静力学法と異方性転位弾性論によって解析した.まず,レナードジョーンズポテンシャルを用いて,仮想結晶材料について行い,次にシリコン-ゲルマニウム結晶界面について解析したが,いずれも分子静力学と異方性転位弾性論の結果は,よく一致した.シリコン-ゲルマニウム結晶界面については,実際のエピタキシャル成長させた界面のひずみについて,透過型電子顕微鏡を用いて観察を行っている.今後,実際のエピタキシャル成長した異種結晶界面上での応力場と解析の結果の相関性について詳しく検討してゆく予定である.
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