本研究では高分子繊維の中でも非常に高強度で高弾性率を有するPBO繊維を対象として、繊維の使用時に繊維内に発生するキンクバンドが引張強度や疲労強度にどのような影響を与えるのか、さらに、紫外線を照射した場合にその影響がどのように変化するかについて研究を行った。その結果として以下の知見を得た。 キンクバンドはPBO繊維の引張強度に対して永久損傷として作用し、キンクバンドの発生したPBO繊維の引張強度はワイブル解析の結果、有効体積の概念で説明できることが明らかとなった。キンクバンドは強度に対して永久損傷として作用するが、PBO繊維に折り曲げに近い曲率でキンクバンドを発生させても強度の低下は発生前と比べて約17%の低下にとどまっており、非常に高い残存強度を有している。このことから実用上的に非常に優れた強度を有する繊維であることが分かった。 キンクバンドの発生したPBO繊維に対して紫外線照射を行うと、繊維の自動酸化はキンクバンド部分では他の部分よりも早く進行することがX線マイクロ分析の結果で明らかとなった。 キンクバンドの発生したPBO繊維に対して紫外線照射を行うと、キンクバンドの密度が低い場合、繊維の強度低下要因は表層部分の自動酸化よる荷重保持断面の減少であるが、キンクバンド密度が高い場合はキンクバンド部分の自動酸化のため、キンクバンドが強度に対して切り欠きとして働くため、強度低下が大きくなる。なお、疲労強度については、現在、学術論文を作成中であり、追って発表する予定である。
|