研究課題/領域番号 |
26420024
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
米山 聡 青山学院大学, 理工学部, 教授 (90306499)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 逆問題 / 材料特性 / 弾塑性 / 画像相関法 / ひずみ測定 |
研究実績の概要 |
本研究は,画像相関法により機器・構造物のひずみ分布測定を行い,その結果を用いて弾塑性材料特性の分布を逆問題解析により評価する方法を確立する事を目的としている. 今年度は,前年度までに検討・開発した弾塑性材料特性逆解析方法の原理をもとに,正確に材料特性を同定する方法について検討した.すなわち,画像相関法等の測定により得られる変位/ひずみ分布には測定誤差が含まれるが,その測定誤差が材料特性の同定(逆解析)に大きく影響し,なんらかの工夫なしでは正確に材料特性を評価することは困難である. 基本原理としては,未知数(未知材料パラメータ)と同じ数の仮想変位場を用意することで未知数と同じ数の式(連立方程式)を得ることができ,その方程式を解くことで未知材料特性を同定する.したがって,仮想変位場の数を増やすことで式の数を増やすことができ,最小二乗法を適用して材料特性を決定することができる.この方法を測定データに適用し,これまでよりも正確に材料特性の同定を行うことが可能であることがわかった. 次に,荷重段階(荷重値)の異なる複数の変位/ひずみ分布測定データを同時に用いて材料特性の同定を行う方法を検討した.複数の測定データに対して複数の仮想変位場を用いるため,ここでも最小二乗法を用いて材料特性を同定することができる.その結果,弾塑性材料特性の同定精度が向上した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に引き続き,変位/ひずみ分布測定結果から弾塑性材料特性を逆解析する方法を検討し,実際の測定データ(誤差を含むデータ)からでも材料特性の同定が可能となった.従来の多くの逆問題解析の研究が数学的であり,逆解析のシミュレーションで有効性を示すことで完結することを考えると,提案する方法がいかに有効であるかがわかる. 弾性材料の特性を同定する場合には,測定誤差の影響を低減する最適な仮想変位場を自動的に決定することが可能である.一方,弾塑性材料特性の同定においては,現時点では最適な仮想変位を自動的に決定することはできない.最適な仮想変位の自動決定は必ずしも必要ではないものの,できれば可能としたい技術である.ただし,現時点でその方法を開発できそうな見通しは得られていない. 以上のことから,まだまだ検討課題はあるものの逆解析が可能な原理を確立することができ,さらにそれを実行することが可能であることから,計画はおおむね順調に進んでいるといえる.
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今後の研究の推進方策 |
材料特性分布の評価法の確立を目指し,試験片の局所部分に解析対象領域を設定しその領域におけるひずみ分布測定結果から材料特性を評価する方法を検討する.ここで,この時点では局所領域というのは必ずしも微小領域である必要はなく,測定対象物体(試験片)の内側であればよい.この場合,解析対象領域の境界条件は未知であるため,材料特性の同定に対して必要な荷重値を知る事ができない.しかしながら,本研究で用いる方法は,解析対象領域境界の一部の荷重値を利用して材料特性の同定が原理的に可能である.この原理そのものの有効性はすでに確認済みである.ここでは,遠方での荷重の測定値を用いて解析対象領域の一部の境界の荷重を推定する必要があるため,その方法やそれを実現するための条件(対象物体の形状・負荷方法・荷重の測定方法)などについて検討しているものの,まだ解は得られていない.なお,ここでは局所領域での材料特性の評価法の確立を目指すため,まずは線形弾性体(等質弾性体および非均質弾性体)を対象として検討を行う. 逆解析に適した仮想変位場をできれば自動的に決定することも課題の一つである.本研究代表者は,弾性材料を対象とした場合に測定誤差の影響を最小化する適切な仮想変位場を自動的に決定する技術を開発している.この技術を弾塑性材料に拡張可能かどうか検討はしているものの,現時点では可能となっていない.今後,この検討を勧め,弾塑性材料特性を精度よく同定する方法の確立を目指す.
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