本研究では,多焦点PID偏光顕微ラマン分光応力測定法による樹脂系複合材料の高速応力マッピング技術を確立するために,平成28年度は,平成27年度に構築した多焦点多点分光偏光顕微ラマン測定装置の最適化を実施した. 前年度に,多焦点を形成し,検出されるラマン散乱光を分光する装置を構築したが,検出散乱強度が想定よりも低く,応力測定は困難であった.そこで高強度レーザーを導入し,さらに光学系の最適化を行った.その一つとして,マイクロレンズアレイによる多点形成ではレーザー強度がそのまま反映されるため,光学回折素子(DOE)による多点形成を行い,レーザー光の強度分布の改善を行った. 第二に,面分光の測定実績を増やすことで,ズーミング測定が可能な装置を構築し,シリコンと航空機用樹脂系複合材料(FRP)について測定し,相の検証を行った. 第三に,樹脂系複合材料の応力測定に向けて,単層グラフェンシートのひずみ負荷過程におけるラマンシフト変化量について測定を行い,ラマンシフトとひずみの関係を明らかにした.今年度は4点曲げ試験と引張試験を行い,3つのピークを独立に検出する偏光条件のもと,ひずみに対するラマンシフト変化量の関係を測定した.ひずみに対するラマンシフト変化は測定できたが,高い線形性は得られなった.この理由として,単層グラフェン内のドメインが影響しているものと考えられ,今後ドメインを考慮した測定が必要と考えられる. 最後に,樹脂系複合材料(FRP)を対象に,ひずみ負荷に対するのラマンスペクトル測定を行った.炭素繊維からは荷重負荷に対してラマンシフトが変化することが分かっていたが,今回,樹脂についても荷重に対してラマンシフトすることが分かった.しかしながら高負荷になると,ラマンシフトが変化しなくなったため,今後検討が必要である.
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