研究実績の概要 |
本年度は,エレクトロスピニングによる多孔質中空ポリ乳酸(PLLA)ファイバースキャホールドの紡糸技術の開発を行った. 昨年度までの成果として, 1,3-dioxolaneにPLLAを溶解させたPLLA溶液とエタノール水溶液を,二重ノズルを用いて紡糸することで中空構造PLLAファイバースキャホールドの作製に成功した.また,1,3-dioxolaneにPLLAとpolyethylene oxide(PEO)を溶解させたPLLA/PEO溶液を高湿度下で紡糸することで多孔質構造PLLAファイバースキャホールドの作製に成功した. 昨年度までの成果をもとに,中空PLLAファイバー内へ浸透した培養液が培養軟骨内部へ供給されるよう,ファイバー壁を多孔質構造とすることを試みた.多孔質中空ファイバースキャホールドを作製するため,PLLAおよびPEOを1,3-dioxolaneに混合したPLLA/PEO溶液を外側溶液とし,エタノール水溶液を内側溶液として,二重ノズルを用いて紡糸した.PLLA/PEO比率90/10,濃度8 w/v%のPLLA/PEO溶液に対し,20 v/v%エタノール溶液を外側溶液Qoと内側溶液Qiの吐出量比Qo/Qi 5.2,および40 v/v%エタノール溶液を吐出量比3.4と5.2としたときに,作製したファイバーは多孔質中空構造となった.また,その他の条件では中空構造を有しない多孔質ファイバーが作製された. アガロースゲルに包埋した多孔質中空ファイバーと多孔質ファイバーへの蛍光溶液の浸透を観察した結果,多孔質中空ファイバーの蛍光輝度が多孔質ファイバーよりも早く上昇し,その値は60分後で3.4倍を示した.これより,開発した多孔質中空ファイバースキャホールドの培養液供給性は多孔質ファイバーより向上し,培養組織内での細胞活性の維持が可能であることが示された.
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