1.ガスタービン動翼に使用されている単結晶超合金は遠心力,高温ガスによる曲げ力および翼内外面での温度差による熱負荷を受ける.これらの負荷の重畳により,ガスタービン動翼での最もクリープ疲労損傷の大きい場所は動翼外面となる.動翼外面では多軸応力の圧縮ひずみ保持を伴う熱応力損傷を受ける.圧縮ひずみ保持を伴う熱応力損傷を受ける動翼外面のクリープ疲労損傷評価が実用上の課題となる. 2.圧縮ひずみ保持を伴う熱応力損傷量を実験室での基礎データから評価するため,保持を伴わない一定温度での低サイクル疲労試験データをまず蓄積した.単結晶超合金のひずみ制御下での多軸低サイクル疲労寿命は結晶方位の影響を大きく受けるが,ミーゼス型の相当応力を用いれば,結晶方位や多軸応力の影響を受けずに統一的に整理できるとの当申請の研究成果を利用する. 3.圧縮保持期間中のクリープ損傷を評価するため,多軸応力下で圧縮保持を伴うクリープ疲労データを蓄積した.蓄積したクリープ疲労データを分析し,圧縮保持期間中の多軸クリープ損傷は負荷ひずみ波形の周波数低下を考慮することで評価できることを当申請の研究成果で明らかにした. 4.1で設定した実ガスタービン動翼の信頼性評価は,2および3の成果と有限要素法解析とを用いることによって可能となる.すなわち,実ガスタービンでの負荷形態を模擬した有限要素法解析を実施し,最も損傷の大きい部分のミーゼスの相当応力および繰返し周波数を求める.それらを,蓄積したクリープ疲労寿命線図に適用すれば,実ガスタービン動翼の一定のき裂長さに対応するクリープ疲労寿命を求めることができる.
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