研究課題/領域番号 |
26420032
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
村山 理一 福岡工業大学, 工学部, 教授 (20330946)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 超音波 / 長距離導波体 / 高温構造物 / 非破壊検査 / ガイド波 / 電磁超音波探触子 |
研究実績の概要 |
長距離超音波伝送体を用いた高温構造部の非破壊検査の研究において,長距離から超音波を送受信することは最も重要な部分である.そのため,導波体の最適条件を検討した.検討条件としては導波体の直径および,周波数である.検討した結果,導波体の直径2[mm]の鋼製丸棒,EMATを用いて駆動周波数200[kHz]のときもっとも伝搬距離が長いことが判明した.またセンサコイルについても検討し最も信号強度が高いセンサコイルを選定した。このときの超音波限界伝搬距離は約80[m]であった。また,さらに伝搬距離を長くするために,EMAT以上の信号強度が得られるNi+EMATについて検討した.ニッケルは鉄以上に磁歪振動を得られることが知られている.導波体にNiを貼付する方法として最終的に厚さ0.06[mm]のNi箔をエポキシ接着剤で導波体に接着した。この結果、信号強度はEMATの二倍以上であり,約180[m]の距離を伝搬する可能性があることが判明した. 次に構造物表面に発生した表面キズを検出するために,板波用音響ホーンを検討した.すなわち縦波から横波に変換するモード変換用の治具を製作した.しかしそれらを用いてもキズ検出は出来なかった.理由はモード変換することによりエネルギーが損失するためである.そこで治具に銅を用いることにより,板波を発生させる音響ホーンを開発した.これは銅の縦波音速が鋼の板波音速よりおそいため,スネルの法則を成立させることが出来るためである.この銅を用いた音響ホーンを用いた結果、厚さ0.6[mm]の鋼板に発生した丸穴仮想キズをφ5[mm]から検出することが出来た. また500℃の高温雰囲気中に導波体を設置し,高温状態での超音波送受信が出来るか検討し、500℃程度の高温雰囲気中でも超音波を送受信できることが判明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画書に示した、超音波の長距離伝播化で実施する予定であった、線径の小さい線材で安定的に超音波を送受信できる電磁超音波センサを開発するという点に関して、予定していた電磁超音波センサの改良型として①Ni箔を導波体に巻きつけ磁歪振動で超音波を伝送すること、②Niメッキ技術を使い、線材に直接Ni箔を成形し、それを磁歪振動の拠点とした超音波の送受信技術を開発する、という2種類の手法について実験的に比較評価を行い、Ni箔を導波体に巻きつけ磁歪振動で超音波を伝送することが、作業性、安定性も含めてより優れていることを証明した。その結果として最適径を決定し100m以上の超音波伝送体を使った超音波の送受信を実現している。 また、構造物の表面疵を検査するために、導波体と構造物の間に、種々の形状(材質)の音響ホーンを検討し、最終的に表面疵検査ができる音響ホーンを見出せたこと。
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今後の研究の推進方策 |
本技術をより実用レベルにもっていくためにターゲットとして,発電所で使用されており、可能であるならば常時モニタリングが強く求められている熱交換器を新たに加えることを検討している。その場合は、配管に導波体を巻きつけることで、軸方向、周方向に進むガイド波の送受信が必要になる。この点を積極的にトライし、本技術の有用性レベルを一段と引き上げていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年度は、超音波伝播解析ソフト(購入済み)とともに、電磁場解析ソフトを購入する予定であったが、使いやすさ・値段の観点でこちらの要望を満たすソフトを年度内に見出すことができなかった。また超音波伝播解析ソフトを駆動するためには専用のコンピュータが必要なこともわかり、その購入費用にも一部充当した。
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次年度使用額の使用計画 |
比較的、安価な電磁場解析ソフトを既に見出しており、現在、簡易版(お試し版)で、導入の容易さを確認中である。2015年度は、この電磁場解析ソフトを購入する予定である。
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