研究課題/領域番号 |
26420034
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研究機関 | 小山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
北條 恵司 小山工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (10455115)
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研究分担者 |
高橋 宏治 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90334630)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Shot peening / Residual stress / Fatigue limit / Hardness HV / Rendering crack harmless |
研究実績の概要 |
材料硬さ(HV)が,SP加工により無害化できるスリット寸法に与える影響を,実験と破壊力学的評価の両面から検討した.素材は高炭素で高清浄なSUP9鋼を用いた.調質により材料硬さをHV270および350に制御し機械加工により試験片の製作および半円型の人口き裂の導入を行った.これらに対して,SP(ショットピーニング)加工有無の試験片を準備して,室温大気中で応力比R = 0.05の曲げ疲労試験を実施した. その結果,SP加工により無害化できるスリット寸法は,HV270および350に対してそれぞれ半径0.2mmおよび0.3mmであった.SP加工により発生する残留応力分布を測定し,疲労試験結果を考察した.このように材料硬さがSP材の疲労限度向上に及ぼす影響を系統的に調査した例は初めてである. これに対してSP による残留応力および疲労試験の負荷応力により発生するスリットまわりの応力拡大係数を算出した.それを本材料固有の下限界応力拡大係数範囲と比較して無害化可能な最大スリット寸法を破壊力学的に評価した.その結果HV270の材料に対しては a = 0.22mm で,HV350 では a = 0.34mm であった.この結果は実験結果とよく整合していた.つまり残留応力分布から求めた応力拡大係数を用いることにより,その材料の無害化可能なき裂の最大寸法を推定することができると結論される. これらはH26年度の研究目的および計画をほぼ遂行したことになる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請において3項目の目標を設定している. (1)SP加工により無害化できるスリット寸法に与える材料硬さの影響を調べる.(H26) (2)SP加工により無害化できるスリット寸法に与える応力集中係数の影響を調べる.(H27) (3)SP加工により無害化できるスリット寸法の破壊力学的解析(H28) これらの目標に対して,(1)および(3)の一部が完了した.
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今後の研究の推進方策 |
H27年度の研究課題は「SP加工により無害化できるスリット寸法に与える応力集中係数の影響」である.応力集中係数α=2では実験を終了しているので,α=3程度で実験を行い,無害化できるスリット寸法がαにどのように依存するかについて詳細に調査する. 一般的に応力集中部の残留応力を測定することは精度の面から困難である.それに対して,cosα法での測定が開発されつつあるので,本研究でも用いて測定する. また現在,これらの無害化寸法は実験と解析を別々に行っているが,残留応力分布をより深く測定することにより,実験データから求められる可能性がある.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由はおもに次のとおりである. (1)試験治具を当初外製見積もりしたが,内製したため250千円が未執行.(2)試験片製作の加工方法を放電型彫加工から機械加工に変更したため約500千円の節約.(3)論文投稿がH27にずれ込んだため,投稿料金50千円の未執行.
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次年度使用額の使用計画 |
前年度の未執行額の使用予定はおもに次のとおりである. (1)次年度または新しい研究を計画するための予備実験のための治具を制作する.(2)試験片加工方法を計画通り放電加工にする.(3)現在執筆中の論文はH27に投稿する.また国際会議参加に使用する.
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