研究課題/領域番号 |
26420044
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
立矢 宏 金沢大学, 機械工学系, 教授 (10216989)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 小形工作機械 / 変形補償 / 高精度位置決め / びびり振動 / 振動抑制 / 圧電素子 |
研究実績の概要 |
本研究は,汎用機と同等な鋼材切削が卓上で可能な小形NCフライス工作機械の開発を目標としている. 本年度は,まず,小形化にともなう剛性低下による機体の変形補正方法として,機械各部のひずみから機体の変形を予測する方法を検討し,実際に市販の小形加工機で同手法の有効性を調査した.その結果,変形誤差を20~40μm抑制することができ,提案する手法の可能性を確認した. 次に,小型工作機械の設計を実際に行った.設計仕様として,被削材の材質をSS400,その最大寸法を,高さ×幅×厚さを130×70×6㎜と設定し,工作機械の寸法を700㎜立方程度として,加工能率を考慮し,最大エンドミル径を6㎜とした.本年度は,同工作機械のスピンドルおよびXYテーブルを設計対象として,スピンドルは最高回転数10000rpm,最大トルクを600mN・mとし,XYテーブルの各軸方向ストロークを160㎜とした.以上の仕様を満たすため,スピンドルには伝達機構を省けるモータビルトインスピンドルを選定して,その具体的な仕様を決定した.また,XYテーブルは小形化を図るため,LMガイドにクロスLMガイドを採用した.汎用のLMガイドが,1方向にのみ稼動するのに対し,クロスLMガイドは,2本の垂直なLMレールにより2方向に稼動する.したがって,XY軸間のベーステーブルが不要となり,工作機械の小形化が図れる. さらに,小形工作機械による切削時に問題になると予想される,びびり振動の抑制を図るために,圧電素子を用いた汎用的な制振方法の検討を行った.提案する方法では,圧電素子に超音波振動を励起して,制振対象の振動方向に対し垂直に加圧接触させ,すべり摩擦を発生させて,この摩擦によるエネルギ損失を利用し振動を抑制する.今年度は片持ち梁を用いた実験装置を製作して,種々の条件で測定を行い,提案する方法で梁の振動を高い減衰率で抑えられることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず,これまで研究を行ってきた,工作機械の本体に生じるひずみから,機体の変形を予測して,加工時の位置決めを補償する方法に関して,その実用可能性を確認することができた.次に,このことから,工作機械にある程度,低剛性な構造を採用する根拠を得て,小形化した工作機械の主要構造を設計した.さらに,圧電素子を用いた振動抑制に関して,利用を検討していた振動の減衰促進現象が一般的に生じることを,各種条件下での実験で確認することができ,工作機械用の振動抑制装置開発の基礎とすることができた. よって,初年度の目標をおおむね達成していると判断しうる.
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き,小型工作機械の設計を進める.今年度は工具送り機構およびその支持機構の設計を進める.これまでの研究で,ベース部分に対して鉛直方向に支持され,片持ち構造となる工具送り軸は,大きな変形が生じやすいとともに,振動の発生源となりやすく,また,同部分の剛性のみを向上させても,静的および動的特性向上の効果は少ないことを確認している.本課題では,変形の補償方法や振動の抑制方法を検討するが,これらの根本的な発生そのものも減少させるために,適切な支持構造の検討をまず行う. 次に,以上で設計した小形工作機械に,これまでに提案した工作機械の変形補正方法を適用するため,機体変形の測定位置,測定結果に基づく,工具やワークの駆動系の制御方法を検討する. さらに,昨年度,その原理を確認した圧電素子を用いた振動抑制方法に関して検討を進める.これまでの実験から,振動の抑制効果は条件により大きく変化することを確認している.そこで,今年度は,圧電素子の駆動条件や,振動対象との接触条件などを系統的に変化させて,効果的に振動を抑制可能な条件を明らかにし,同現象の物理的な原因を考察する.これらの結果から,工作機械用の振動抑制装置の設計を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
振動抑制実験に用いる圧電素子などを連携研究者から提供いただいたため残額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
まず,小形工作機械開発として,工具支持部装置製作のための部品,支持部駆動のためのモータ,工作機械を設置する除振台などを購入する.次に,振動抑制実験のために,前年度とは異なる特性を持つ圧電素子を繰越額も利用して購入する.さらに,圧電素子接触部の負荷を記録するための計測系を購入する.
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