本研究は,汎用機に匹敵する高精度,高速な鋼材切削が可能な,卓上設置を前提とした小型工作機械を実現するため,機体の小型化設計を行うとともに,小型化による剛性低下に起因する機体変形を補正して高精度な加工を実現する方法,さらに,圧電素子を利用した簡易な振動抑制方法を検討した. まず,工作機械の小型化設計を行い,ワークの水平方向の案内面を簡易な構造とし,主軸にはモータ一体形のスピンドルを用いることで,縦×横×高さの寸法が,690×455×458㎜,各軸方向の駆動変位量が60×160×50㎜,主軸出力が1.57kWである,目標とした700㎜立方程度の容積を十分満たす,鋼材切削が可能な小型3軸NCフライスを開発した. 次に,機体変形補正による加工の高精度化として,主軸に作用する負荷と機体変形の関係を明らかにして,同関係を表す実験式を導き,予備加工で測定した切削負荷から,機体変形を予測して切削時の切り込み量を変化させるプログラムを開発した.実際にSS400材を用いて切削を行ったところ,補正無しの場合,約60μmの誤差が発生することに対し,提案する補正方法を用いることで,誤差を0.3μmまで減少させることができ,高い加工精度が得られることを確認した. さらに,振動抑制方法として,圧電素子を用いたリニアアクチュエータで振動とは直交方向に断続的な衝撃力を対象構造に加えて減衰を高める方法を検討し,同方法により減衰能が増加すること,その効果は圧電素子に生ずる電流値に関連し,高い減衰効果が得られる条件が存在することを見いだした.また,接触部の摩擦力が減衰能に影響することを確認するとともに,摩擦力を発生するリニアアクチュエータの打撃力を,応力波の一次元伝ぱ理論を利用した測定方法により求め,その大きさが電流値に相関することを明らかにして,リニアアクチュエータの最適な駆動条件を決定するための方針を示した.
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