研究課題/領域番号 |
26420047
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
酒井 克彦 静岡大学, 工学研究科, 准教授 (80262856)
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研究分担者 |
静 弘生 静岡大学, 工学研究科, 助教 (80552570)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 切削加工 / チタン / ドライ加工 / 環境対応加工 / 高生産性切削加工 |
研究実績の概要 |
申請者らはこれまで、生産現場に適用が容易でかつ切削工具寿命改善効果が高い各種手法について、混合ガスミスト切削加工法、アルカリ電解水ミスト切削法、窒素ガスブロー高送りミーリングなどの方法を提案し、それぞれの切削加工特性について実験的・解析的な検討を行ってきた.その過程において、通常クーラントを用いた低切削速度での加工が適用されるチタン材料の旋削加工に,窒素ガスドライを適用することによって完全ドライ環境下でありながら低摩耗で高速切削を実現できる可能性を見出した.本申請はこの切削工具摩耗低減効果が発現するメカニズムを解明し、チタン材料の切削加工の環境対応と高生産性、低コスト化を同時に達成する手法を確立、提案するものである.今年度はこれまでの研究結果をふまえ、旋削注の加工点にN2などのガスブローを噴射した場合における切削点近傍の状態を、実験的・理論的解析により明らかにするための各種実験及び測定を実施した.前者については、切削実験中の切削動力の解析や温度測定を実施した.後者では切削により生成される参加物や窒化物を同定するためにEPMAによる元素分析およびXPSによる原子結合状態解析を実施した.今回はチタンとの比較対象実験として一般構造用鋼S45Cについて各種計測を実施し,工具被削材熱電対法で切削速度V=100~200m/min,ノンコート超硬工具を利用した外周旋削実験では切削点温度は切削点に噴射するガスを圧縮空気,およびN2ガスに変化させても切削点温度は優位の差で変化しないことを見いだした.さらに,XPSのスペクトル変化の解析から,今回の実験の範囲内では切りくず表面の酸化物や窒化物生成状況に有意な差は認められず,これは一般構造用鋼とチタンでは酸素との親和性を含む材料諸物性が異なることに起因すると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまで外周旋削実験時にミスト噴射ノズル付きバイトを利用して切削点のガスシールド実験を実施してきたが,本手法ではガス流に大気を巻き込んだり,加工後の切りくずが加工点を離脱する際に周囲の大気と接触することによる酸化や窒化などの様々な影響が懸念されることから,平成26年度は普通旋盤の切削点近傍を密閉するための治具を試作し,酸素濃度計で切削点のガス組成を測定しな柄実験を行うシステムの開発を行ってきた.しかし,実際に試作した装置では刃物台の可動範囲があまりに狭く旋削時のデータ取得が不十分だったり,切りくずが噛み込むことによって実験を中断せざるを得ないなどのトラブルが続き,この点を改善するためにエフォートが必要だった.今年度は治具の構造を大幅に見直して簡便な方法で切削点近傍のガスシールドを行うような検討を行い,直ちにガス雰囲気時切削加工実験を実施する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は引き続き一般構造用鋼やチタン,およびその合金についてN2ガス雰囲気旋削加工実験を実施し,切削中の動力や温度をはじめ二次元切削によるすくい面上の摩擦力とせん断面上の剪断力などのその場観測,切りくずや工具表面の分析を通してガス雰囲気により切削メカニズムがどのように変化し,それが工具摩耗に与える影響について定量的に評価を行う.さらに,チタンおよびその合金を切削加工の際に問題となる工具への溶着の発生状況について雰囲気ガスへの依存性を確認する.また,切削を各種ガス雰囲気で行うことに加えて,還元性が強い強アルカリ電解水ミストを供給して同様の実験・解析を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該研究に関わる国際会議発表や国内研究発表を予定して予算計上していたが,予定通りに研究が進行しなかったため今年度は国際会議発表を見送ったことにより使用額と予算額に差異が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は昨年度使用しなかった旅費を本来の国際会議発表や国内発表で使用する予定である.さらに昨年度では実験用の治具作成を遂行することができなかったため,引き続き本年度に関しては治具製作に関する材料費や部品費を本予算で調達する予定である.
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