研究課題/領域番号 |
26420057
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研究機関 | 拓殖大学 |
研究代表者 |
渡辺 裕二 拓殖大学, 工学部, 教授 (30201239)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 超精密加工 / 超音波精密加工 / MHz帯超音波 / 弾性表面波 / 強力超音波 / 圧電応用 / 超音波接合 |
研究実績の概要 |
本研究では強力超音波発生用MHz帯域弾性表面波(SAW)素子としてPZT基板を用いる。電子部品で多く利用されるニオブ酸リチウム基板など圧電結晶体では、超音波接合時など強力超音波応用時に重荷重に耐えられないからである。そこでPZT基板について、接合用基板としての性能を評価した。PZT基板には、同じ印加電圧に対して変位振幅が大きいソフト材と、力が大きいハード材があるため、双方についてSAW発生用電極を表面に生成して検討した結果、本研究では周波数特性の先鋭度がより急峻なハード材を採用することに決定した。また、予備実験として試行したPZT基板による一方向性SAW素子の霧化実験から、PZT基板によっても接合可能な振動変位振幅は得られることを確認した。 以上を踏まえ、接合用素子として充分な振動変位振幅を得るために、SAW発振器とSAW反射器を組み合わせた共振器の構成を採用することとし、理論に基づくシミュレーションプログラムを作成し、最適設計値を求めた。 まず、発振器部と反射器部の間隔に関しては、ファブリペロー共振器の構成を参考にし、反射器端部における位相変化を考慮して、往復で(波長/4)+n波長の間隔を採用することにした。この時点でニオブ酸リチウム基板にフォトエッチング法で電極を生成し、周波数特性を測定した結果、従来の設計法および蒸着により電極を生成した基板に対して、共振の先鋭度に大きな改善が見られた。次に、電極対数とメタライゼーションレシオ(電極1対における電極部分と基板部分の長さの比)について検討した結果、幅30mm☓厚さ20mm☓長さ90mmのPZT(富士セラミック:C-213)基板にアルミニウム電極を1μm厚でフォトエッチングにて生成するという条件に対して、電極対数は14対、反射器対数50mmとすることにより、副振動の発生が抑制できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度において、在来の振動解析ソフトによる振動状況の把握だけではなく、電極生成の最適設計プログラム作成の必要性が高まったため、電極の厚さなど詳細にパラメータを設定できるシミュレーションプログラムを新たに開発した。この開発に要した期間分(約2か月)の遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
現在、上記の最適設計プログラムの機能および設計結果の妥当性を試作実験により検証している。この試作素子が設計通りの性能を満たした時点で、当初の計画進度が回復する。さらに、その設計結果を踏まえ、SAW合成素子についてフォトエッチング法による電極生成を進めていく。同時に、現有のデジタル顕微鏡に自動ステージを装備することにより、製作したSAW素子の全面について、電極加工の精度が迅速に検証できる態勢を整える。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費において、当初計画の装置と同等品を購入したため。また、学会発表が都内のみであったことから、長距離の旅費が発生しなかった。謝金として計画していた電極作成依頼費については、設計の遅れから平成26年度には発生しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費として新たに、現有のデジタル顕微鏡に装備する自動ステージを購入する計画である。この装置により、作成電極の加工精度の評価が飛躍的に迅速化し、かつ厚さ測定機能の利用により、シミュレーションプログラムのパラメータ設定値の全てに実測値が利用できる。また、最適設計プログラムの性能検定用素子およびその結果を踏まえた最適設計素子の電極生成について、外部委託する。
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