本申請課題はマルチワイヤソーを用いたスライシング加工の研究で,工具として用いるピアノ線の表面に樹脂コーティングをして,加工に際してはダイヤモンド砥粒とワイヤソー用の専用加工液を懸濁させたスラリーを加工部に連続的に供給しながらスライシング加工する方法である.今年度の研究ではシリコン(Si)並びにシリコンカーバイト(SiC)に対して以下のことを検討した. ◎シリコン 今年の加工では半導体デバイス用のシリコンインゴットを切断することをイメージして,円柱形状のシリコンインゴットの切断特性を実験的に評価した.切断実験で用いたシリコンインゴットは2インチ,4インチ,6インチの3種類で,それぞれのサイズのインゴットに対して鏡面加工が実現できることを示した.また,シリコンインゴットのサイズが大きくなるにつれて,ワイヤ表面の樹脂へ加工中に埋め込まれるダイヤモンド砥粒数が増加しないと,鏡面加工が実現しにくいことも明らかにした. ◎シリコンカーバイト 切断後のウエハのうねり精度の向上を目指して,スライシング加工中に加工台の送り速度,加工中に往復するワイヤ工具の反転条件を変化させて,各種切断条件の下で2インチのインゴットの加工実験を行った.加工中に加工台の送り速度を加減速することによってワイヤの横方向のブレを抑えることができることが明らかとなった.そして,その結果,切断後のウエハ厚み0.28mmで,接着剤で工作物を固定している接着部以外の精度が約19μmまで向上できる加工条件を見出した.
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