研究課題/領域番号 |
26420062
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
加藤 秀治 金沢工業大学, 工学部, 教授 (90278101)
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研究分担者 |
森本 喜隆 金沢工業大学, 工学部, 教授 (00290734)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 低弾性率 / 超弾塑性β型チタニウム合金材料 / 難加工性 / 人工歯根 / 合金組織 / 微細加工 / 表面変質層 |
研究実績の概要 |
本研究は,生体適合性に優れ低い弾性率を有する超弾塑性β型チタニウム合金材料を使用し,加工表面の材料組織的な信頼性向上を図るため,回転工具を用いて切取り厚さを薄く制御することによる微細加工技術の構築を試みるものである.実際には,微細加工における表面変質層の発生機構の解明を試みる.加えて,微細表面加工における切削条件(切削温度)の違いが表面変質層に及ぼす影響を明らかとすることにより,これを考慮した最適微細加工条件の選定を試みる.また,オリジナルの工具形状を提案し,自由曲面表層の微細形状形成を試みる. 本年度は超弾塑性β型チタニウム合金の基礎的加工特性の把握と適正切削条件の選定を試みた.供試材料を静的条件下で700度を境として材料組織の変化について検討した.加熱前後のサンプルと700度以下のサンプルについてTEM画像と電子線回折パターンを用いて微視的組織の観察を実施し組織変化の比較を行った.加熱温度が700度以上において組織が大きく変化し,低弾性率を発生する前の材料組織に戻ることを確認した.また,加工変質層抑制加工に向けた加工条件の選定を試みた結果,工具材料としては当初予定していたナノ多結晶ダイヤモンド工具に比べ超硬コーテッド工具が有用であることと,被膜材種は密着力の高いAlCrSiN被膜が耐摩耗性と加工面粗さの点で優れていることを明らかとした.さらに,切削性能の切削速度依存性と各切削速度条件における切削速度測定を明らかとし,耐摩耗性と加工面粗さの観点から切削速度2.5m/sが適正な切削条件であることを明らかとしている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度予定していたのは,超弾塑性β型チタニウム合金の基礎的加工特性の把握と微細加工用工具の設計と加工変質層抑制を実現するための微細加工条件の最適化である.材料の基礎特性を把握することはできた.当初使用するはずであったナノ多結晶ダイヤモンド工具が十分な加工特性を示さなかったため,予備的に準備していた工具材料に変更したが,損傷機構等を明確にできた点は成果が得られたと判断できる.また,切削性能についても温度測定を実施し,切削速度依存性を明らかにすることができたことからおおむね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は工具材料が変更になったものの,加工変質層抑制を実現するための微細加工条件の最適化の内容を踏まえて、最適条件下における微細切削メカニズムの検証を行う.基本的には申請書の予定に基づき,以下の2点に着目して研究を進める. ①TEM画像と電子線回折パターンおよび電子線後方散乱回折法(EBSD)を用いた微視的組織観察による加工変質層の検証を行う.また,②切削機構を明確化するためピエゾを用いた極微小動移動が可能な移動ステージを用いた二次元モデルによる切削挙動の詳細観察を実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたナノ多結晶ダイヤモンド工具が予想以上に加工特性が悪く、使用できない状況になった.このため,工具研磨に使用する消耗品分が次年度使用額として積み残された.
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次年度使用額の使用計画 |
今年度使用予定していた工具研磨費用を次年度の実施項目の加工表面変質層のサンプル作成に必要な実験消耗品として使用する計画である.
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