本研究の目的は、材料表面に耐疲労性の向上につながる高圧縮残留応力および硬化層を生成するための切削加工技術を開発し、その有効性を疲労試験によって検証することである。研究1年目と2年目は、通常切削面の残留応力と疲労特性との関係を実験的に検討するとともに、フライス加工用の超音波振動切削装置を設計、製作し、超音波振動切削面に対する疲労試験の実施体制を整えた。 本研究最終年度の28年度は、切れ刃の逃げ面接触幅および接触角を変化させて超音波振動切削実験を行い、加工面の表面特性(残留応力および硬さ)が耐疲労性に及ぼす影響について検討した。その結果、逃げ面接触幅0.5~0.75mm、接触角5°の工具を用いたS55C焼鈍材の超音波振動切削において、-1400MPaに達する高圧縮残留応力層とビッカース硬さHV600を超える加工硬化層が生成され、これら切削面に対する疲労試験では、試験片破断までの繰返し数が140万回を超え、市販の工具チップによる切削面の20万回に比べて耐疲労性の著しい向上がみられた。超音波振動切削による表面特性向上効果は、適切な切れ刃形状と併用することによって強く現れるが、超音波振動援用の大きな利点は、通常切削の場合に比べて低い切削抵抗のもとで表面特性の向上効果が得られることであり、これは高い加工精度が求められる切削では、実用上極めて有用な知見であり、引き続き関連する応用研究を進めたいと考えている。
|