超弾性特性を有するニッケルチタン合金の切削加工では、切削加工後の超弾性特性の変化が課題であった。切削加工後にカテーテルとして適用できるか明らかにするため、本研究ではニッケルチタン合金に対してマイクロエンドミル加工を適用し、切削加工が超弾性特性に及ぼす影響について検討した。平成28年度は、超弾性合金の線材に対して切削加工実験を実施し、切削加工後の特性について評価した。 切削加工実験に使用したマイクロエンドミルは、直径0.5mmのスクウェアエンドミルで、ニッケルチタン合金の切削加工において摩耗を低減できるよう昨年度までの研究で開発したものである。切削条件は、主軸回転数を毎分2万回転、一刃あたりの切込み量を2ミクロン、深さ方向の切込み量を10ミクロンとした。その結果、超弾性特性はそのままでアスペクト比2以上となる微細溝をすることが加工できた。この要因としては、開発したマイクロエンドミルが従来エンドミルに比べて切削抵抗が小さく、切削温度の上昇が抑制されたことなどが挙げられる。 この結果から、これまで単純形状しか加工できなかった超弾性合金に対して、深溝をはじめ自由曲面を有する形状など複雑な微細形状の加工が可能となり、さまざまなセンサの取り付けが容易になる。これは検査と治療とを同時に実施できる多機能カテーテルの開発などにもつながることから、カテーテル治療が必要な患者への負担を大幅に低減できる。マイクロエンドミルを用いたカテーテルの製造は、製造工程の短縮、コスト削減などにもつながる。
|