研究課題/領域番号 |
26420075
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
三科 博司 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50142641)
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研究分担者 |
長谷 亜蘭 埼玉工業大学, 工学部, 講師 (10552953)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | トライボロジー / 凝着力 / フォースカーブ / 摩擦面顕微鏡 |
研究実績の概要 |
平成26年度に計画・実施したSPM(走査型プローブ顕微鏡)用チップレスカンチレバーに金属微粒子を付けたプローブを作製し,本年度に実際の金属表面間の凝着力を測定した.金属摩擦面の凝着力の測定には本研究課題で考案し,その測定方法を確立したFFM(摩擦面顕微鏡)- FC(フォースカーブ)連動システムを用いて,各種金属材料の摩擦面凝着力を測定した.金属材料には,金,銀,鉄,銅,亜鉛,ニッケル,チタン,モリブデン,タングステンの9種類の金属摩擦面と約30ミクロンの粒径をもつ同じ金属粒子間の凝着力をフォースカーブを用いて測定した. まず,通常の条件下のフォースカーブから得られる凝着力とFFM-FCシステムを用いた時の凝着力を比較し,金属表面が50回程度のFFMによる摩擦によって表面膜が破壊・除去され金属表面の凝着力の測定が可能であることを明確にした.そしてFFM-FCシステムによる測定の結果,FFMによって100ミクロンほど摩擦した面と金属粒子間の凝着力を測定し.原子間結合力との相関性を確かめることができた.また,金属粒子の粒径を5ミクロンから100ミクロンの範囲で変化させ,凝着力におよぼす粒子半径との関係を調べた.その結果,摩擦面では塑性変形が起こり塑性変形した表面の凝着力であるため,JKR-DMT理論で考えられている弾性変形や平坦な平面において見られるような粒径依存性がないことを示した.また,真空中と空気中の凝着力測定から,本実験では水のメニスカス効果による凝着力への影響も小さいことを見出した.測定で得られた摩擦面の凝着力が,C.Kittelの凝集エネルギーとほぼ直線的な関係を得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度のFFM-FCシステムを用いた実験によって,金属摩擦面の凝着力について多くの知見が得られ,その結果は予想以上に明確な結果となって現れている.特に,金属摩擦面に関する基礎的実験データが多く得られ,金属原子間の凝集エネルギーとの相関関係や,摩擦面の真実接触面積による凝着力への影響,さらに接触による塑性変形による影響などを新たに得ることができた.これらを総合すると,当初の計画以上に研究が進展している状況である.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,本研究課題であるFFM-FC連動システムを用いた金属摩擦面凝着力測定の結果とピン・オン・フラット型微小摩擦摩耗試験機によって得られる凝着摩耗の摩耗素過程との関係を明らかにする.実際には,摩耗の素過程におけるもっとも基本となる摩耗素子の生成と凝着力の関係を解明し,これまでに提案している凝着摩耗の摩耗式における凝着力の作用を明らかする.このことによって,トライボロジー現象における凝着力の役割を定量的に明確にする.
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次年度使用額が生じた理由 |
海外の国際会議に出席できなかったため(研究代表者).
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次年度使用額の使用計画 |
次年度,国際会議の旅費に使用予定.
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