研究課題
深絞り加工では,薄板をダイとブランクホルダーに挟み,材料を押さえるブランクホルダー力を作用させ,金型間に薄板を流入させることで所望の立体形状を得る.自動車部品のような複雑形状を対象とした絞り加工においては,ブランクホルダーを分割し,各ブランクホルダーに独立なブランクホルダー力を作用させ,材料の流入を部分的に制御する分割ブランクホルダー力による成形の有効性が指摘されているが,有効かつ実用性のある決定法は提案されていない.本研究では,計測用トレイを対象に,成形後のフランジ部に生じる耳を最小とするような初期ブランク形状と,ストロークに応じて材料の流入を部分的に制御する分割可変ブランクホルダー力の同時最適設計を行った.分割可変ブランクホルダー力の最適軌道設計に関しては,一方のブランクホルダー力が他方のブランクホルダー力を制約することを考慮した方法を提案した.また,初期ブランク形状については,有限個の制御点を設定し,移動方向を規定することで,設計変数の増加を抑えたブランク形状を表現する方法を提案した.成形限界線図と引き込み量を基本としたシミュレーションモデルを構築し,そのシミュレーションモデルを用いて,Radial Basis Functionネットワークを用いた逐次近似最適化によって,初期ブランクの最適形状と分割可変ブランクホルダー力の最適軌道を決定し,サーボプレスを用いて検証実験を行った.実験結果から,整合性の高い結果を得ることができた.自動車部品等の複雑な成形品に対し,成形不良なく成形するためには分割可変ブランクホルダー力は極めて有効な方法の一つであり,本研究では初期ブランク形状と分割可変ブランクホルダー力の同時最適化を行い,シミュレーション結果に留まることなく,検証実験を通じその有効性を示したことは,今後の先進的薄板成形技術の発展につながると大いに期待できることを示した.
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