研究課題/領域番号 |
26420077
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
辺見 信彦 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (80256669)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 軸受診断 / ジャーク / 信号処理 / 低速回転 |
研究実績の概要 |
本研究は数rpm程度で極低速に回転する転がり軸受の損傷の有無を判定するための新しい損傷診断システムを開発することを目的としている。具体的にはリアルタイム計測システムの試作と損傷部位の多様性への対応の有効性を検証し,実用化の目処を立てる。そして明らかにしようとしているのは,(1)信号処理のリアルタイム化と,(2)実証範囲の拡大である。平成26年度は,前者(1)について,DSPによる実システムを構築し,処理法の簡略化を検討した。DSPボードによる処理回路と機構の試作と改造を進めた。提案方法のリアルタイム信号処理回路を設計し,システムを試作した。数rpm~数千rpmの回転に対する検討を可能にさせるよう,モータの交換を実施した。また予圧の状況が信号の大きさに影響することから,予圧に対する信号の検出具合を詳細に調整した。処理回路メモリ限度での最低回転速度での診断を実施した。損傷部位が複数箇所の場合への適用と問題点を洗い出した。平成27年度は内輪損傷に対する提案法の有効性を検討した。平成26年度までの装置では円錐ころ軸受を使用した。円錐ころ軸受の場合は内輪に転動体がリテーナとともに組み込まれて一体となっているため,模擬損傷を内輪の軌道面上に人為的に設けることが出来ない。そのため円筒ころ軸受に対象軸受を変更し,それに対応するため,実験装置を再設計し製作した。円筒ころ軸受には軸受隙間があり,異常信号の特殊性があることを新たに明らかにした。さらに本研究で提案する損傷診断法が転動体が損傷を通過する周期を基準として処理する方法であったが,軸受隙間のある場合は,その処理基準の周期を軸の回転周期に変更し,信号処理回路の時定数を調整することによって,そのまま同手法の概念を適用できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りに予備実験を重ね, DSPによる実システムを構築し,処理法の簡略化を検討し,DSPによりリアルタイム信号処理回路を設計し,システムを試作した。低速から高速回転に対応できるようモータの交換と機械構造を含めた回転実験装置を改造製作した。外輪損傷に対して低速回転での実証実験を実施し,5rpmまではシステムの検証できた。さらに同じ装置では内輪に傷がある場合の検討が物理的にできないため,実験装置全体を再設計し,内輪損傷に対する検討が可能な装置を新たに製作した。内輪に人為的に損傷を付けるためには,内輪が外せるタイプの軸受を使用する必要がある。そのため軸受隙間がある円筒ころ軸受を使用した。この場合は軸受隙間が存在するが,これにより内輪損傷の場合は軸受隙間の存在による信号の特殊性があることを明らかになった。その上で,提案する診断法を改良することによって内外輪両方の損傷を検出し診断できることを明らかにした。以上のように実施計画に沿った内容を検討でき良好な結果を得られた。実験計画の後半に検討予定の転動体に損傷がある場合についても現在進行中である。以上により概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
円筒ころ軸受により,外輪と内輪の損傷に対する本研究の提案法の調整法と有効性を明らかにしたが,引き続き転動体に損傷がある場合についても診断法の有効性を検討する。内輪に損傷がある場合に,損傷による異常振動の特殊性と同様に,転動体に損傷がある場合も類似の特殊性があることが推察される。そのためまずは内輪と同様の検討と対応が可能かどうかを検証する。さらに外輪の2か所に損傷がある場合に,2つ目の傷の信号が出難いことを明らかにしたが,構造的問題かセンサの問題かを引き続き検討し,その原因を明らかにする。さらに内輪と転動体についても同様に2つの損傷がある場合について検討をする。またリアルタイム処理化に対しては,これまでDSPボードによる比較的大がかりな処理を実施していたが,実用性を鑑みて,DSPの代わりにPICマイコンIC処理による簡易化を図る。その際データ処理メモリの問題が考えられるためその対策を講じる。 最終的に処理方法の学術的な優位性と実用化に向けた課題を明らかにし,本研究の助成最終年度の報告書としてまとめる。報告内容の一部は国際学会および国際学術誌にて発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
大学からの予算を併用し,旅費や人件費を抑えることができ,また購入する物品をできるだけ必要性能を満たす廉価品を選択する努力をしたので,執行せずに済んだ5000円程度の予算を2016年3月の時点で生じさせることができた。また28年度の研究計画で電気回路等への物品購入予算が申請時予定以上にかかることが予想されたため,次年度に残すこととしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度の研究計画では自動処理化のための電気回路製作にかかる物品費に予算が多く見積もられるため,5693円全額を物品費に合算して執行する。
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