研究課題/領域番号 |
26420080
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
福田 応夫 九州大学, 水素エネルギー国際研究センター, 客員教授 (90532333)
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研究分担者 |
杉村 丈一 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20187660)
森田 健敬 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70175636)
田中 宏昌 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80264076)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | トライボロジー / 慣らし運転 / 凝着摩耗 |
研究実績の概要 |
平成26年度の計画通り、摩擦試験機の改造を行い、試験片の位置決め精度と試験片解析位置分解能の向上を行った。位置分解能の向上はハードウェアの改造とソフトウェアの開発の二つの側面から実施した。ハードウェアの改造に関しては、ディスク試験片を回転させるモータをサーボモータに変更した。ソフトウェアの開発は、サーボモータのコントローラのプログラミングと、試験機全体をコントロールするパーソナルコンピューターのプログラミングの両面から行った。これにより、サーボモータの回転軸を、内蔵するロータリーエンコーダの0(ゼロ)点で精度良く停止させることが可能になった。また、ディスク取り付け治具を新たに設計・制作し、ディスク試験片に付与した0点マーキングと回転軸の0点を精度良く合わせて固定することを可能とした。また、そのための観察手段として、ピン取り付け位置にUSBタイプの小型顕微鏡を設置し、位置合わせの確認が容易になるよう工夫した。 ディスク試験片の解析用位置決め装置の開発も行った。上述の0点を起点としてステッピングモーターによりディスク試験片を回転させ、顕微鏡による観察、硬度や粗さの分布測定を可能とした。測定装置の観察ステージ上に設置できるよう、薄型の駆動装置を設計・作成した。 ディスク試験片の物性データと摩擦・摩耗データの位置情報による紐づけの妥当性検証に用いる試験片は、オーステナイト系ステンレス鋼を用いることとした。表面に部分的に異なる物性を付与する方法を検討し、形状に関しては化学腐食あるいはレーザー加工による方法を、硬さなど物性に関してはショットピーニング法によることとした。 また、平成27年度に計画している加重速度変更機能付与について前倒しで実施し、従来のエアシリンダー方式からモータ駆動方式とする改良を行った。さらには、衝撃荷重付与技術などに関する概念設計を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の研究計画調書の平成26年度計画に記述した内容は、研究実績の概要に記述した通りすべて達成している。課題遂行に関する問題は特に発生していない。また装置の改良・改善については部分的に翌年度計画内容も前倒しで実施している。 従って、「研究の目的」に照らして、凝着の発生する位置と凝着の規模を精度良く、また定量的に測定するための準備は整いつつあり、計画はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の計画として、まず第一に改良・改造した装置の機能検証を行う。2種類の機能検証用ディスク試験片、つまりディスク表面に(1)部分的な形状付与を行った試験片と、(2)部分的な物性(組織変化による硬化など)変更を加えた試験片を準備する。これらの特性の分布が、しゅう動試験におけるトライボデータに位置精度良く反映されることを確認する。この方法で良好な結果が得られない場合は、表面に部分的なコーティングを施した試験片、あるいは部分的に潤滑物質を付与した試験片などの採用を検討する。 次に、試験装置へのさらなる機能付与については、衝撃荷重を与えるための概念設計を開始しており、詳細設計が完了次第、順次施工することとする。 新たに付加された機能を用いた実験については、当初計画を変更すべき要因は見出されておらず、予定通り遂行する。つまり、凝着の起点となることが想像される形状や物性の部分的変更を加えた試験片による実験を行い、これらの仮説を検証する。また、衝撃を受けた場所が凝着の起点となるかについても順次実験を行い、機器の慣らし運転の優劣を支配する要因を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の装置改造に伴う機能検証に必要となる実験消耗品の使用量を、当初計画より少なくすることができたので、約200,000円の次年度使用額が発生した。技術的検討を行った結果、表面観察用と微小硬度測定用ディスク試験片の回転位置決め装置を可搬型とし、兼用できる構造としたため、1台分の金額である約500,000円の次年度予算額が生じた。また、当該装置の設計等を見直し外注から内製に切り替えて予算の削減を図ったが、ピン・オン・ディスク摩擦試験機の位置決め装置に当初予定より多い予算が必要となった。以上の結果として517,334円の次年度使用額が生じた。 本年度参加予定としてた学会参加を来年度に延期したため108,833円が、今年度は研究者による作業を主体としたので人件費である75,000円が次年度使用額となった。 以上の合計として、701,167円が次年度使用額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額となった金額のうち517,334円については、荷重付加速度制御の機能向上(現状である10Nより大きい負荷である50Nに対応し、かつ変位制御精度を向上させる)に対応する装置の機能向上・改造費として支出する計画となっている。 次年度より実験回数を大幅に増やすため、当初計画より人件費を75,000円増額して使用する。また、当該年度から次年度に延期した学会参加を実施するため、108,833円を使用する。
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