研究課題/領域番号 |
26420080
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
福田 応夫 九州大学, 水素エネルギー国際研究センター, 客員教授 (90532333)
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研究分担者 |
杉村 丈一 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20187660)
森田 健敬 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70175636)
田中 宏昌 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80264076)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | トライボロジー / 慣らし運転 / 凝着摩耗 |
研究実績の概要 |
平成26年度は研究計画をやや前倒しに遂行することができた。平成27年度は、平成26年度に得られた成果(表面粗さを変化させた試験片による調査)を基に、当初計画の内、試験片表面の状態を意図的に変化させた調査を先行して行った。計画当初は表面酸化膜の調整を予定していたが、その後の研究成果により、長期しゅう動においてはそれよりもやや深い基材の材質変化の影響が大きいことが分かった。そのため、新たにショットピーニング法による金属表面近傍組織への歪付与方法を採択し、潤滑下のしゅう動に及ぼす影響の調査を行った。 意図して部分的にショットピーニングによる表面改質を施したディスク試験片を用いた試験により、初期摩耗期間(慣らし運転に相当すると考えられる)が短縮され、短期間に境界潤滑に基づく定常摩耗状態に到達できることが示された。またショットピーニングによる表面改質が過度になると、長期間しゅう動した後であっても平滑な表面を得ることができず、良好な境界潤滑状態が達成しづらくなることも明らかとなった。これは長期間しゅう動後であっても十分なΛ値(潤滑膜と表面粗さの比)が得られなくなったと解釈できる。これらは新たな知見であり、ショットピーニングの強度と慣らし運転期間の関係を明らかにすることは、実用的な観点から重要な研究課題であると考える。ただし、本研究の目的である凝着の拠点を明らかにする観点からは、明確な結論が得られなかった。 しゅう動試験中に条件を変化させる調査については、しゅう動中に衝撃荷重を与える機構を導入準備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に前倒しで行った調査により、試験片表面の状態を意図的に変化させた調査を先行させた方が良いと判断した。そのため、予算執行の観点からは遅れが生じた。つまり、今年度中に実施予定であった摩擦試験機への衝撃荷重付与の機能追加の優先順位を下げたため、その分の予算執行が遅れている。衝撃付与の方法と、付与した衝撃が各種センサーに及ぼす影響に関する検討、概念設計を完了して機構作成のための詳細設計を開始しており、来年度の早い時期に導入する予定となっている。 以上から、研究内容としては「おおむね順調に進展している」と判断した。ただし、予算執行上は遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
研究内容の観点からは順調に遂行できているので、当初計画通り、しゅう動中衝撃荷重付与装置を導入し、その影響について調査を開始する。具体的には、与える力積を変化させて、衝撃的荷重を受けたしゅう動位置において特異なトライボロジー現象、特に凝着が生じるかを実験的に調査する。 表面状態を意図的に変化させる調査については、引き続きショットピーニング法を用いて継続する。ただし、表面改質の程度に関する調査は必ずしも本研究案件の範囲とならないため、別な機会に譲り、部分的なショットピーニングによる表面状態の分布と、凝着の発生位置の関係調査を重点的に行う。 本年度は本研究の最終年度にあたるため、上記二つの観点からの調査結果を総合的に検討し、必要であれば両方の実験技術を統合した実験を行い、報告をまとめる。 本年度は、国内外の研究発表会で各1件の発表と、国際論文誌に1報の投稿を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に前倒しで行った調査により、試験片表面の状態を意図的に変化させた調査を先行させた方が良いと判断した。そのため今年度中に実施予定であった摩擦試験機への衝撃荷重付与の機能追加の優先順位を下げて次年度案件とし、600,000円が次年度使用額となった。また今年度は研究者による作業を主体としたので人件費である225,000円が次年度使用額となった。その他、学会参加費、学会参加交通費が予定していたよりも安価であったため、また研究者間の打ち合わせを学会参加などの機会に行って旅費を節約したため、総額で約1,300,000の次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
実験装置の改造についてはすでに計画が完了しており、導入のための予算である600,000円は次年度の早いタイミングで使用予定である。装置の完了と共に多くの実験作業がルーチンワークとなるため、300,000円の人件費を使用した実験作業の促進を行う。それに伴い、試験片の購入費と実験消耗品費として追加の100,000円が必要となる。 来年度は本研究の最終年度となるため、最終とりまとめのための打ち合わせを密に行う必要があり、そのための旅費300,000円の使用を予定している。 以上、合計で1,300,000円が来年度予算に加えて必要となる計画となっている。
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