研究課題/領域番号 |
26420083
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
馬渕 清資 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (70118842)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 人工股関節 / 微動摩耗 / 不動態被膜 / 摩耗試験 |
研究実績の概要 |
今世紀になって,使用頻度が急増した金属同士の摩擦面を有する人工股関節において,2010年以降に,高頻度で異常な生体反応が発生することが明らかになり,その原因が,金属イオンの溶出にあると推定されている. 本研究課題では,骨頭と頸部の間のはめ合い接合部の微動摩耗について,不導体膜の破損のメカニズムを明らかにし,金属イオンの溶出を防ぐための人工関節のデザインを模索することを目指した.往復動の振幅や摩擦速度の条件を種々に変えて摩擦試験を行い,その過程で,腐食電位測定を逐次行うことで,不動態膜の損傷,修復過程をモニターした.振幅や速度と不動態膜の破壊の関連を求め,そのメカニズムを推定した.実験対象として,コバルトクロム合金同士の組み合わせのピンとディスクを用いた. 摩擦を開始すると,腐食電位は,摩擦の往復動のストロークが0.1mm~0.8mmまでの間で0.05~0.3 V低下した.さらに,1mmのストロークでは,0.15 Vとなった. 摩擦運動を停止した後,腐食電位は,次第に回復した.その経過を,一次遅れ要素のステップ応答に近似して,その時定数を求めたところ,その値は,ストロークが0.1 mm~0.8 mmでは,0.2 s ~ 0.6 sと上昇した.しかし,1 mmのストロークの時には0.05 sに低下し,最も小さい値となった. 微小なストロークが,不導体膜の修復を妨げるという当初の仮説は,明確に検証できなかった.不動態膜の回復に要する時間は,ストロークの影響をあまり受けなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の実験において,いくつかの条件で,スティックスリップによる振動が激しく発生するために,測定精度の維持が困難だった.そのスティックスリップを防ぐために,今年度は,試験機の最小滑り条件を変更することで,対応できた.27演題の学会報告と4編の原著論文の公表が達成できた.
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今後の研究の推進方策 |
スティックスリップをさらに抑えるために,滑り方向に対して傾斜した運動方向に自由度を与える予定である.そのために,摩耗試験機に,新しい構造を組み込む予定である.その製作費用を本課題で支出する予定である. 摩耗実験の往復動のストロークの最小幅については,これまで,0.1mmだった.さらに,微動条件を確立するために,最小ストローク幅を,0.01mmとして,実験を継続する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度までの実験において,スティックスリップ現象の影響のために,実験結果の信頼性が失われていた.その解消を目的とした,摩耗試験装置の改造を目指した結果,いくつかの装置を加える必要が生じた.その手配の完了のタイミングが,年度末になってしまい,2015年度には,制御プログラムのみの変更に止めて,本体の改造については,やむを得ず,次年度に購入を予定した.
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次年度使用額の使用計画 |
主に,人工関節摩擦摩耗試験機用上部掴みチャック(30度捩り)の購入費用として支出する予定である.また,試験片の製作,購入費用への支出を考えている. その他としては,成果公表のための,論文掲載費および学会発表に悲痛ような旅費,交通費に支出予定である.
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